わきがの悩み(中)自分のニオイを知る判定法

[コラム わきがの悩み(中)自分のニオイを知る判定法]

(読売新聞  2018年4月10日)
(五味院長の「スッキリ!体臭で悩まなくなる話」)


わきがは個性として受容すれば、悩みは軽減します。
ただ、実際に悩んでいる人は、自分のニオイの程度を知りたいことでしょう。
知ることで安心もできます。

最も簡単な方法は「官能検査」。
人間のきゅう覚による判定です。
臭気判定士や皮膚科の専門家にかいでもらうことで、客観的に判定されます。
「スパイシー」と表現される、わきが特有のニオイを、通常の汗臭と識別
できるなら、自分の鼻でかいで判断することも可能です。
ただ自分自身では、嗅覚がわきがのニオイに慣れてしまい、客観的な判断が
できないことがあります。
特にわきがが強いケースほど、通常の汗臭との区別が難しくなる傾向が
あります。



<5つの身体条件で自己判定する>
その場合には、きゅう覚ではなく身体的所見から判断する「自己判定法」が
あります。
以下のいくつかの条件を総合的に見れば、非常に正確な判断ができます。


(1)耳あかが軟らかい
耳あかが湿っているか、乾燥しているかは最も信頼性の高い条件です。
なぜなら、外耳道には通常の汗腺であるエクリン腺は存在していません。
耳あかが絶えず湿っているということは、わきがの原因となるアポクリン腺の
「類似汗腺」である耳垢腺が多くある。
つまり、ワキの下にアポクリン腺が多いことの間接的な証明になります。

綿棒で耳の掃除をする時に、綿棒がパサパサで耳あかが乾燥している人は、
この1点だけで、わきが体質ではありません。
ただ外耳道に炎症があったり、皮脂腺からの分泌物でも綿棒が湿ることが
ありますので、自己判定する場合には、例えば「溶けたキャラメル」状の
ものが綿棒に付着するかどうかで判断してください。


(2)下着が黄ばむ
これも大切な条件です。
ワキにアポクリン腺が多い場合には、分泌物にリポフスチンという色素成分が
多く含まれています。
その色素成分が、白い下着のワキの部分を、「黄土色」から「茶色」に
黄ばみをつくります。
ただ、たくさん汗をかいた時にも「汗ジミ」の色が下着につくことがあり
ます。
「汗ジミ」を、わきがの「黄ばみ」と誤解することがありますので注意して
ください。
また、制汗剤でも下着に色がつくことがありますので、「黄ばみ」による
判定は制汗剤を使用していない時にしてください。


(3)ワキの毛が多い
アポクリン腺は毛根部に存在するので、ワキ毛が多いとアポクリン腺が
相対的に多いと推定されます。
ただし、ワキ毛が多くてもアポクリン腺がない場合もありますので、この
条件は参考程度と考えてください。


(4)遺伝関係がある
わきが体質は遺伝的に決まりますので、親や兄弟にわきがの人がいれば、
この条件も一応参考になります。


(5)ワキ汗が多い
アポクリン腺も汗腺の一種ですので、ワキの汗が多く出ます。
ただ、精神性発汗でも通常の汗が多く出ますので、多いだけでは判断は
できません。
緊張した時に多く出る汗は、精神性発汗の可能性があります。
「ワキ汗イコールわきが」と思い込む人が多いので注意してください。

以上の5つの身体条件を総合的に把握することで、ほぼ正確な判定が可能
です。
医療機関に行かずとも、また自分のきゅう覚に自信がなくても、客観的かつ
簡単に判定できますのでぜひ利用してください。



<遺伝子診断で体質を3段階に>
自分の体質を知りたいという人には、「遺伝子診断」も可能になりました。
わきが体質の人は「ABCC11」という遺伝子の塩基配列上で、グアニンが
「GG」というふうに並んでいます。
わきがの傾向が弱くなると、Gの1つがアデニンに変わり、「GA」の配列と
なります。
わきがではない人は、GがなくなりAAという配列です。
この1つの塩基の変化で体質が変わる特徴を利用して、わきが体質の程度を
3つのタイプに分けることができます。


余談ですが、動物はニオイによって、つがいの相手を決めます。
ニオイの違いで、自分の遺伝子とできるだけ異なる遺伝子の相手を本能的に
選んでいます。
お互いが遺伝子的に近いことで特定の病気が多く現れ、その種族が絶滅する
ことを避けるためです。

これは人間でも同じです。
結婚相手として、遺伝子的に理想のタイプは、体臭が異なる相手です。
ですから、ABCC11の遺伝子配列が異なる人同士がお似合いということになり
ます。
このような意味で、わきがも、わきがでないのも生物としての人間の大切な
個性なのです。



<アポクリン腺を目で確認も>
もうひとつ、わきがではないのに「わきがではないか?」と悩んでいる人に
とって、有効な医学的診断法は「試験切開」です。
ワキの下の皮膚を数ミリ切開し、皮下のアポクリン腺の数や大きさを直接、
確認する方法です。
アポクリン腺はイクラのように直接、目で見えますので、わきがの程度が
視覚的に判定できます。
この検査の特徴は、医師側だけでなく、患者さん本人にも鏡で確認してもらう
ことです。
「アポクリン腺がない(少ない)」という事実を自分の目で確認するなら、
「百聞は一見にしかず」です。
長年の不安が一目で解消されるでしょう。



(五味常明 五味クリニック院長)



https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20180213-OYTET50059/?catname=column_nioi





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