なぜ、生の豚肉を食べてはいけないの?

[なぜ、生の豚肉を食べてはいけないの?]

(家庭の医学  2018年4月6日)


<寄生虫が目や脳に寄生!?>
豚肉はよく火を通してから食べるようにといわれます。
牛肉ならレアやミディアムでも楽しめるのに、なぜ豚肉はダメなので
しょうか。

生や加熱不十分な豚肉には、人体に危害をおよぼす寄生虫やE型肝炎
ウイルス、サルモネラ属菌、カンピロバクターなどの細菌がひそんでいる
おそれがあります。

なかでも危険なのが寄生虫「有鉤嚢虫」の感染です。


有鉤嚢虫は、サナダムシの一種である有鉤条虫の幼虫で、豚に寄生して
います。
ヒトが嚢虫の含まれた加熱不十分な豚肉を食べると、体内に取り込まれた
嚢虫が腸に寄生して成虫(有鉤条虫)となります。
汚染された水を飲む、家族の中に感染者がいることなどもリスクとなります。

有鉤条虫は小腸内で生き続け、産卵します。
ここから産まれた有鉤嚢虫は、腸管から体内組織に移動して寄生します。
これによって起こる下痢や食欲不振などの症状が「有鉤嚢虫症」です。
筋肉や皮膚に寄生すると、その部分にこぶ(腫瘤)としてあらわれます。

恐ろしいことに、有鉤嚢虫は眼球や脳にまで達することがあります。
眼球に寄生すると失明などの視覚障害が、脳に寄生すると(脳有鉤嚢虫症)
けいれんや意識障害、麻痺、平衡感覚障害、脳水腫などの重篤な症状を
引き起こします。
最悪の場合、死に至ることさえあるのです。

治療には抗寄生虫薬を用います。
寄生部位の炎症を抑えるためにステロイド薬を併用するなど、症状に合わせた
対症療法も行われます。
また、手術によって有鉤嚢虫を取り除くこともあります。


嚢虫感染の予防には、何よりもまず生や加熱が不十分な豚肉を食べないこと
です。
調理するときには、十分に火を通すことを心がけ、調理前後は手洗いを徹底、
包丁、まな板、箸、トングなどの調理器具も清潔に保ちましょう。

厚生労働省では、肉の中心部の温度が75度の状態で1分間以上加熱することを
すすめています。


日本国内では飼育環境の衛生管理や食肉検査が徹底されており、有鉤嚢虫に
汚染された豚肉が市場に出回るリスクはほとんどありません。

しかし、海外渡航歴がなく、国内感染と推定された日本人も少数例報告されて
います。

また、輸入肉については100パーセント安全とはいえないのが現状です。
海外旅行の際、とくに発展途上国で口にする豚肉については感染リスクに
十分注意する必要があります。


(監修:東京医科大学病院 総合診療科准教授 原田芳巳)


https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125131/


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