免疫細胞を若返らせる技術を開発

[免疫細胞を若返らせる技術を開発]

(あなたの健康百科  2018年4月5日)


<新たながん治療法の開発へ>
がんとの戦いに疲れた免疫細胞に、ある刺激を加えると、細胞が若返り再び
戦う力をもてることがわかりました。

2人に1人ががんにかかる時代、新たながん治療の開発に大きな期待が
寄せられています。


2017年5月、慶應義塾大学医学部の研究グループは、がん細胞との戦いで
疲弊した免疫細胞を若返らせる技術を開発し、より効果的ながん治療へ応用
することに成功したと、英国の科学雑誌に発表しました。


免疫細胞とは、体外から侵入した異物や病原体、体内の悪性腫瘍細胞などを
認識し、特異的に攻撃する細胞のことで免疫担当細胞ともいいます。
白血球の一種でリンパ組織に多いリンパ系細胞のほか、マクロファージや、
樹状突起をもつ樹状細胞などがあります。

リンパ系細胞には、T細胞、B細胞、NK(ナチュラルキラー)細胞、形質
細胞などがあります。
マクロファージや樹状細胞は、その突起によって異物の抗原を認識し、その
情報をT細胞やB細胞に伝え、情報を受け取ったT細胞やB細胞は活性化し、
異物を攻撃し排除するように働きます。

免疫細胞のなかでも、T細胞は体内でウイルスや細菌などの病原体だけで
なく、異常ながん細胞を排除するために重要な役割を果たしています。

「細胞移入療法」と呼ばれるがん治療法がありますが、これはがん患者から
取り出したT細胞を試験管内で培養し、がん特異的T細胞のみを増やし再び
がん患者に戻すというものです。

しかし、何度もがん細胞と戦ったT細胞は、次第に増殖できなくなったり、
攻撃できなくなったりするといいます(T細胞の疲弊)。
つまり、細胞移入療法では疲弊した細胞をがん患者の体内に戻しても、十分な
治療効果がのぞめなくなるという問題がありました。


研究グループは、疲弊したT細胞に、Notchと呼ばれる特殊な刺激を加える
ことで、細胞を再活性化させ、若返らせることに成功。
若返った細胞は「誘導性ステムセルメモリーT細胞(iTSCM)」と名付けられ
ました。
この細胞はがんを攻撃する力を強く発揮することから、がん治療への早期
応用が期待されています。


疲弊状態に陥ったT細胞を若返らせる方法としてiPS細胞を作製する方法が
開発されていましたが、時間、コスト、手間がかかるため、実用化はなかなか
難しいと考えられています。

今回の研究は、より簡単な方法でT細胞を若返らせることに成功したという
点も注目を集めています。


まだマウスによる研究段階ですが、今後はヒトの腫瘍内のT細胞からiTSCMを
作製し、ターゲットとなるがんを死滅させられるかどうかが課題として
います。

また、今回はがんの治療への応用に限定した研究ですが、一般的な細胞の
「若返り」の方法の開発にもつなげられるのではと期待が寄せられています。



(監修:虎の門病院 内分泌代謝科医長 宮川めぐみ)



https://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/125127/





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