咀嚼側(噛み癖)の不思議

[咀嚼側(噛み癖)の不思議] 硬い物を噛む時には、左右どちらか一方で噛む習性があります。 10年程前までは、硬い物や歯ごたえのある物は、食材の種類に関わらず 左右どちらか一方で噛むと考えられていました。 いくら患者さんが右側で噛む時もあれば左側で噛む時もあると訴えても、 歯科界は左右どちらか一方で噛むとの考えが根強くありました。 それは、患者さんの口腔内にガムを入れて噛んでもらうと、同じ側で噛む人が ほとんどであるとの実験結果が多数報告されていたからでした。 しかし、その後の研究で、左側で噛む食材もあれば、右側で噛む食材もあると 考えられるようになってきました。 さらに、従来は、硬い物や歯ごたえのある物は大臼歯で噛むと考えられて いました。 ところが、硬い物は大臼歯で噛む場合が多いですが、歯ごたえのある物は 食材によって大臼歯や小臼歯、犬歯で噛み分けることが分かってきました。 咀嚼(物を噛む)は、下顎の歯列が極めて平たい臼、上顎の歯列が杵で 餅つきの要領で行われると考えられています。 噛む=餅をつくと食材が下顎の歯列から落ちそうになります。 外側に落ちそうになった食材は、頬粘膜と口唇とによって下顎歯列上に 戻されます。 内側に落ちそうになった食材は、舌によって下顎歯列上に戻されます。 咀嚼は高度な共同作業であり、学習の賜物です。 肉なら肉で、ピーマンならピーマンで、食材が単一であれば、幼児期からの 学習の成果で、上手に咀嚼できます。 けれども、青椒肉絲(チンジャオロウスー)のように、複数の食材の料理の 場合、肉は左側の大臼歯で噛むけれど、ピーマンは右側の小臼歯で噛む パターンの人の場合、食材によって舌が左に寄ったり右に寄ったりしなければ なりません。 左側の大臼歯で噛む肉のために左側頬粘膜を内側に寄せる一方、右側の 小臼歯で噛むピーマンのために右側の口唇を内側に寄せる必要があります。 これが、舌や口唇、頬粘膜を噛んでしまう原因なのです。 舌や口唇、頬粘膜を噛んでしまったら、その時の食材をメモしてみるのが 良いかも知れません。 (横山歯科医院・横山哲郎)
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