マリンスポーツと納豆アレルギーの意外な関係

[こんなにも面白い医学の世界 第37回
             マリンスポーツと納豆アレルギーの意外な関係]

(レジデントノート  2017年10月号掲載)


アレルギーは救急外来では大変頻繁にお目にかかる大切な病態です。
詳細な病歴の聴取が必要であることはいうまでもありません。

先日、納豆アレルギーのある旅行中の患者さんを診察する機会があり、
その患者さんは冷麺を食べて全身の蕁麻疹を発症し、救急車で受診され
ました。

日本に特徴的な納豆アレルギーは、頻度こそ少ないですがなかなかやっかい
で、いったん発症すると呼吸困難や全身の皮疹など比較的重症化するので
注意が必要です。

通常、食物アレルギーは比較的早く症状が出てきますが、納豆アレルギーは
食物アレルギーには珍しく、接触から半日ほどで症状が出る「遅発性」の
経過をたどります。

そのため,原因となる食品がわかりにくく、何回もアナフィラキシーを
くり返す傾向があります。

これは、アレルギーの原因である納豆のねばねば成分、ポリガンマグルタミン
酸の分子が非常に大きく、消化に時間がかかるためのようです。


ところで、なぜ納豆アレルギーの患者さんが、冷麺を食べてアナフィラキシー
を起こしたのでしょうか?
それは、冷麺に入っていたくらげの触手にも納豆と同じポリガンマグルタミン
酸が含まれているため、それが原因となった可能性があります。


このことをヒントに、横浜市立大学の猪又直子先生が、納豆アレルギーの
患者さんを調べたところ、約8割の患者さんがマリンスポーツなど、海に
長時間いる習慣があることがわかりました。

彼らは、海でくらげにくり返し触れることでポリガンマグルタミン酸に感作
されてしまい、それが原因で納豆アレルギーを起こしたのです。

食物アレルギーは、抗原が経皮的に体内に入って発症することも多くあり
ます。

一見全く無関係な納豆とマリンスポーツが結びつく興味深い病態といえます。



https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115933.html




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