[婚約、破談の末の凶行 「思い出を消したかった」
【性同一性障害女性の放火事件】<1>]
(千葉日報 2017年9月16日)
「思い出を消したかった」-。
千葉市内で1月、交際相手の女性との別れ話に落胆して女性の実家に放火し、
現住建造物等放火の罪に問われた同市花見川区の無職、大石絵梨紗被告
(24)に千葉地裁(市川太志裁判長)は15日、懲役5年の有罪判決を
言い渡した。
子どものころから自らの性に違和感があり、性同一性障害と診断された大石
被告。
そんな自分を受け入れ、婚約もしたのに告げられた別れ。
「頭が真っ白になった」
多くの人命や財産を危険にさらした凶行へと駆り立てた背景は?
防ぐ手立てはなかったのか?
性同一性障害者の理解促進に努める団体の代表にも話を聞いた。
(社会部 町香菜美)
<小学生のころから>
“違和感”は、小学生のころから既にあった。
「小さいころから男っぽかった。スカートを嫌がり男の子の友達が多かった」
と、公判で大石被告の母親は振り返る。
短髪で、法廷ではTシャツと紺色のジャージー姿。
質問にははっきりとした口調で答えた大石被告。
「小学生のころから男性といるほうが楽しかった。恋愛対象も女性の方が
多かった」
高校のバスケットボール部の知り合いに「同じ人」がいたといい、そこで
「性同一性障害」という言葉を知る。
専門学校を経て、インストラクターとして働いたジムで出会った女性と
2014年4月ごろから交際。
その後、同居するように。
翌年、同居は女性の両親の知るところとなる。
女性は両親から「別れた方が良い」と諭されたが、隠れて同居を続けていたと
いう。
交際1年半後の2015年の秋ごろ、大石被告は病院で性同一性障害と診断
された。
「自分でも分かっていて驚きはなかった」が、「友人、両親への対応に
悩んだ。カミングアウトは怖かった。周りの見る目が不安だった」
ただ女性からは「自信を持って男性と思っている」と伝えられ、「受け止めて
くれていることがうれしかった」
昨年のクリスマスにプロポーズ。
女性の承諾をもらい、ペアリングも購入した。
<「会わせない」>
幸せの絶頂もつかの間、約2週間後に事態は急変する。
https://www.chibanippo.co.jp/news/national/438789