風邪に抗菌薬は使わない!

[「かぜ」に抗菌薬は使わない!]

(家庭の医学  2017年7月17日)


<「かぜ」で薬がもらえない?>
細菌が抗菌薬に対する抵抗性をもち、薬が効かなくなることを「薬剤耐性」と
いいます。
近年、この薬剤耐性菌が急増している背景から、国は医療従事者に対して
『抗微生物薬適正使用の手引き』を公表し、抗菌薬の適正使用を呼びかける
ことを決めました。


抗菌薬(抗生物質)は、感染症の分野において、多くの治療や予後の緩和に
有効とされています。

しかし一方で、抗菌薬の使い過ぎなど不適切な使用をすると薬剤耐性菌が
増加し、将来的に有効な抗菌薬がなくなるというような深刻な事態も懸念
されています。

厚生労働省によると、この薬剤耐性菌に対して何も対策をとらないままで
いると、2050年には全世界で年間1,000万もの人々が死亡するという推計も
あるそうです。

薬剤耐性対策は国際問題であり、日本では2016年4月に「薬剤耐性(AMR)
対策アクションプラン」が策定されました。
同策では、抗菌薬の適応疾患の見直しなどを行い、2020年の抗菌薬使用量を
2013年水準の3分の2まで減らすことを目標としています。


『抗微生物薬適正使用の手引き』では、外来の患者数が多く、不必要な抗菌薬
処方が多いと推測される、急性気道感染症(いわゆるかぜ症候群)、急性
下痢症(感染性の腸炎など)に対して、抗菌薬を原則的に処方しないことを
推奨しています。
これらの疾患には抗菌薬が効かず、不要な服薬によって副作用のリスクもある
ことがその理由です。

一般的に「かぜ」の原因となる“ウイルス”には、抗菌薬は効きません。
このため、医師や薬剤師は抗菌薬を用いない理由を患者に十分に説明し、
納得のうえで痛みや熱などの症状を和らげるための対症療法をおこない、
休養や栄養補給を指導します。

急性下痢症は、細菌性・ウイルス性に関わらず成人の場合は自然軽快する
ことが多いため、水分摂取などの対症療法がメインとなります。
むしろ、抗菌薬の服薬によって腸の善玉菌を損ね、下痢を長引かせることも
あるといわれています。


この手引きは医療従事者に向けて作成されたもので、抗菌薬の適正使用には、
医師が適応を正しく判断し、治療の選択や薬の使用量、投薬期間などを明確に
評価することが不可欠です。
また、これまで抗菌薬を処方されてきた患者が、受診時に不安を持たない
ように配慮することも求められています。

ただし、患者側も適切に処方された薬であれば、症状が治まったからと自己
判断せずに医師の指示通り服薬する、余った抗菌薬は保管して使いまわしたり
せず、きちんと処分するなど、正しい認識を持つことが必要です。
素人判断で誤った服薬をすると、病状の診断が困難になるうえ、より重大な
リスクとなり得ることを覚えておきましょう。



(監修:目黒西口クリニック院長 南雲久美子)



http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/124557/





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