アイスクリーム頭痛

[こんなにも面白い医学の世界 第23回 アイスクリーム頭痛] (レジデントノート 2016年8月号掲載)(こんなにも面白い医学の世界) 冷たいものを食べると頭が“キーン”と痛くなることは皆さん経験したことが あるでしょう。 これは、「アイスクリーム頭痛(Icecream headache)」として、正式な 医学用語として認められている頭痛です。 このメカニズムは、実ははっきりとは解明されていないのですが、口腔内や 咽頭の温度が急激に低下することに対する反射として、頭蓋内の血管が拡張 して炎症を起こし、それによって頭痛を感じるという説があります。 また、別の考え方も提唱されています。 中咽頭に達した冷刺激は、三叉神経を介して脳幹の三叉神経核に伝達され ますが、この三叉神経核は顔面や歯、頭の痛みに関係し、本来ならそれぞれの 痛みが識別されて脳に伝わるはずです。 ところが、急激な冷刺激によって一気に伝達物質が放出されると、これらの 神経が混線を起こし、関連痛として頭痛を感じるという説です。 関連痛説の方が広く信じられているようですが、どちらも正しいという認識で いいのだと思います。 このアイスクリーム頭痛は,頭痛の研究をしている人にとっては格好の 研究対象で、比較的多くの論文が発表されています。 台湾で約9千人の中学生を調べ、アイスクリーム頭痛は40%にみられ、 女子より男子生徒に多く、片頭痛をもつ生徒に高頻度にみられたそうです。 同様にカナダでも145人の中学生に100mLのアイスクリームを食べさせ、 5秒以内で食べた群には27%に頭痛を認めたのに対し、ゆっくり食べた群では 13%に頭痛を認めたと報告しています。 経験のとおり、急いで食べた方が頭痛は起こりやすいようです. アイスクリーム頭痛は、群発頭痛をもつ患者に多くみられるという報告と、 むしろ少ないとする報告があり、群発頭痛とのかかわりは明らかでは ありません。 ですが、アイスクリーム頭痛が、片頭痛や群発頭痛などと共通のメカニズム、 例えば痛み調節系の障害によるものだとすれば、これらの頭痛の解明のための 研究モデルとして大変有用であることは間違いありません。 関西のテレビ番組で,「探偵!ナイトスクープ」という番組があるのですが、 そのなかで、足湯をしながら冷たいものを食べると頭痛が起きないと言って いました。 いくら調べても私の力ではその答えは見つかりませんでしたが、足湯をする ことで痛覚の混線が起こらず、関連痛が起きなくなるのかもしれません。 誰か教えてください。 (岡山大学医学部 救急医学  中尾篤典先生) https://www.yodosha.co.jp/rnote/trivia/trivia_9784758115728.html          
カテゴリー: こ口腔顔面痛(OFP),  三叉神経痛, せ生理学,  非歯原性疼痛 タグ: , , パーマリンク