カサンドラ症候群

[悩みを理解されない!? カサンドラ症候群]

(家庭の医学  2016年4月21日)

<一人で悩まないで>
「カサンドラ症候群」とは、アスペルガー症候群の夫または妻(あるいは
パートナー)を持つ人に起こる心身の不調のこと。

2003年にイギリスの心理学者が名づけたもので、ギリシャ神話に出てくる
「予言を誰にも信じてもらえない」という呪いをかけられた女性の名前が
由来となっています。

正式な病名ではありませんが、抑うつ、パニック障害、自律神経失調症などの
症状が現れます。

アスペルガー症候群のほぼ7割が男性。
そのためカサンドラ症候群に陥るのは、ほぼ女性といわれます。

アスペルガー症候群は、他人との距離感がつかめない、相手の気持ちを
くみ取ることができない、思ったことをそのまま口にしてしまうなど、
「コミュニケーションをとることが苦手」なのが特徴。
そのため、一緒に暮らしていくなかで、さまざまな支障が生じてしまいます。

アスペルガー症候群は、知的能力に問題はなく得意分野で活躍している人も
大勢います。
職場では「少し変わった人」と思われているかもしれません。
しかし、社会生活は成立しているので、家族間でさまざまなトラブルが
生じていても、あまり表面化することはないようです。

妻が周囲の人に悩みを話しても、「男の人にはよくあること」と理解されない
ことが多いようです。

アスペルガー症候群の人の行動は、明らかにおかしいというわけではなく、
何となく空気が読めない、予定変更が苦手、こだわりが強いなど、程度の差は
あれ、どんな人にも当てはまる性格の一部ともいえるからです。

結婚生活を続ける上で、相手の行動の背景にある感情が理解できないために、
心理的に深い関係を築けないことは苦痛です。
「自分に問題があるから、夫があのような態度をとるに違いない」といって
自分を責めてしまうことも。
本人は悪気がないので、相手の気持ちを考えないで行動したり、何か不都合が
あっても反省せず、常に妻側に問題があるかのような言動をします。
こうして、さらに追い込まれてしまうのです。

夫婦関係を上手く築けない、コミュニケーションに疲れを感じる…
もしかしたらパートナーがアスペルガー症候群の可能性があります。
本人が苦痛を感じていない限り受診させることは困難ですが、まずは
アスペルガー症候群の特徴を知り、理解することが大切です。

トラブルの原因が障害の特性だと知っておくだけでも、気持ちが楽になる
場合もあるでしょう。

また、言動をよく観察しつつ、コミュニケーションが上手いく方法を探り出す
ことも必要となります。

一方、最近ではアスペルガー症候群の存在が少しずつ理解されてきている
ので、職場でそれに気づいて上司が受診を勧めることもあります。

とはいえ、発達障害があるからといって、何もかもを理解し受け入れなければ
ならないわけではありません。
結婚生活はお互いの歩み寄りによって維持していくもの。
つらいときは我慢しすぎず、自分を労わる時間をつくりましょう。

また、同じ立場の人と悩みを共有したり、精神科医や心理士など専門家に
相談することも大切です。

(監修:東急病院、東急健康管理センター所長 伊藤克人)

http://sp.kateinoigaku.ne.jp/kiji/123559/
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