ベートーベンの耳はなぜ聞こえなくなったのか?

[ベートーベンの耳はなぜ聞こえなくなったのか?]

(MEDLEY  2015年11月15日)


<解剖記録から推定>
ベートーベンは難聴に苦しみ、晩年はほとんど音が聞こえない中で作曲を
続けたとも言われます。

その原因として鉛中毒や先天性梅毒などの説が唱えられてきましたが、死後に
行われていた遺体の解剖の記録から、ほかの病気の可能性を指摘した説を紹介
します。



<骨パジェット病によって聴神経が萎縮>
ここで紹介する論文は、ベートーベンに骨パジェット病があったとする説を
支持しています。
骨パジェット病は頭や手足などさまざまな場所で骨が変形することを特徴と
します。

ベートーベンの解剖の記録によると、頭蓋骨の厚さは正常の2倍ほどであり、
耳から音の信号を脳に伝える聴神経は、変形した骨に圧迫されて萎縮して
いました。

また、腎臓にカルシウムがたまってできる石灰化が見られました。
この論文の著者らは、骨パジェット病により骨が変形し、また骨から
カルシウムが血液に流出することにより腎臓の石灰化が起こったとする
考えを示しています。



<晩年のベートーベンを苦しめた多くの問題>
著者らはさらに、ベートーベンに見られた精神症状や腹痛、関節痛、不整脈
などの症状を、骨パジェット病とそれによる高カルシウム血症、また骨
パジェット病にともなって起こりうるとされる痛風によって説明しようとして
います。


加えて、直接の死因は多量の飲酒による肝硬変と慢性膵炎とされていますが、
著者らは慢性膵炎で消化機能が低下した結果、ビタミンAが不足して目の
痛みの症状が現れた可能性を挙げるとともに、以上をまとめて次のように
結論しています。

したがって、副甲状腺機能亢進症を合併した骨パジェット病、痛風、加え
てそれらの症状を和らげようとしてアルコール、キニーネ、可能性としては
サリチル酸をも使用したことが、ベートーベンの医学的問題の実質的に
すべてを説明しうる。これらの一部は彼の作曲にも影響していたように
見える。



骨パジェット病は日本ではまれと言われていますが、病態などについて現在
でもわかっていない部分が多く残る難病です。
今後の研究により、実態の把握が進むことが望まれています。




http://medley.life/news/item/56457af1dcc92b00038d91f4





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