病と生きる 摂食障害:フィギュアスケート・鈴木明子さん

[【病と生きる】フィギュアスケート・鈴木明子さん(30)] (iza  2015年10月10日) フィギュアスケート女子シングルの選手として活躍したプロスケーターの 鈴木明子さん(30)。 ジュニア時代から注目の選手だったが、大学進学後に摂食障害になり、 身長160センチで48キロあった体重は一時、32キロにまで落ちた。 スケートを生きる目標に病気を乗り越え、2度の五輪出場を果たした。 「滑れる幸せ」がスケート人生の支えになっている。 (油原聡子) 東北福祉大学に進学したのを機に愛知県豊橋市の実家を離れ、仙台市の 長久保裕コーチの家に下宿をしました。 20歳のときに迎えるトリノ五輪を目指していました。 フィギュアスケートは体重が重くなると、動きが悪くなり、足への負担も 大きくなる。 体重管理のため食事制限していたつもりが、だんだん食べられなくなり ました。 48きロだった体重は1カ月後には40キロに。 食事が怖くなってしまったんです。 5月には実家に帰り、病院の精神科で摂食障害の診断を受けました。 <摂食障害は、「太りたくない」という極端なこだわりや「太っている 自分には価値がない」という思い込みなど心理的な要因で起こる> 当初は自分が病気だとは受け入れられませんでした。 「コントロールできていないだけ」と思うようにしていたのです。 当時、両親は和食の料理店を経営。 「食べる」のは人として基本的なことなのに、母が作った食事に手が付けられ ない。 親不孝だと悲しく思いました。 母からも「エネルギーのあるものを食べなさい」と言われ、脅迫のように 感じていました。 8月には体重が32キロにまで減りました。 疲れやすく、脂肪がないのでいつも寒気を感じていました。 スケートの練習もできず、焦りが募りました。 シニア初のグランプリシリーズになるはずだったスケートカナダも辞退する しかありませんでした。 体重は一向に増えず、医師からは「30キロまで落ちたら入院しかない」。 入院を拒む私の姿に母は、「この子から、生きる目標を奪ってはいけない」と 思ったようでした。 「まず、食べられるものから、食べよう」と言ってくれました。 食事を取るという普通の生活ができず、劣等感と自己嫌悪しかなかった私を 母が受け入れてくれた。 これが回復のきっかけになりました。 少しずつ食欲が出て、10月には仙台に戻ると、長久保先生が「絶対にできる」 と励ましてくれました。 病院で栄養指導を受け、11月頃に氷の上に戻りました。 その年が明け、学生選手権に出場しましたが、久しぶりの試合で怖くなり、 母に電話をしました。 すると、「氷の上に立てることに感謝して滑ったらいいんじゃない」。 五輪など緊張する大舞台でも「滑れるだけで本当に幸せ」と思って演技できた のは、このときの母の言葉があったからです。 数カ月後、ファンの方のホームページを通じて摂食障害を明かしました。 やせた姿から「病気じゃないのか」などと噂が流れていたので、きちんと 説明したかったんです。 大学2年のとき、摂食障害の原因が母との関係にあると医師に言われました。 私は一人娘で母から厳しく育てられた。 スケートの練習でも「歩くのが遅い」「準備が遅い」と叱られ、褒められた ことがありませんでした。 「母の理想の娘に近づきたい」という思いが、プレッシャーになっていた のだと思います。 摂食障害を経験して、私も母も変わりました。 私は完璧主義の所があり、周囲に甘えることができませんでした。 でも、今はいい意味で「適当でいい」と思えるようになりました。 目指していたトリノ五輪出場は逃しましたが、その後、2度五輪の舞台を踏む ことができました。 ちょっと遠回りをしたけれども、目の前のことに一生懸命に取り組んできた 結果だと思っています。 一部のファンの方に報告したつもりでしたが、「摂食障害からの復帰」と メディアに大きく取り上げられることに戸惑いもありました。 でも、私が病気を克服し、元気になった姿に勇気づけられたという手紙も たくさん頂きました。 私の経験を通して、誰かが救われるのならばよかったのかな、と今は感じて います。 <鈴木明子(すずき・あきこ)> 昭和60年、愛知県生まれ。 6歳でフィギュアスケートを始める。 15歳で出場した女子フィギュアスケート全日本選手権で4位。 平成15年、東北福祉大入学直後に摂食障害になり、平成16年に復帰。 2010年のバンクーバー五輪8位。 2014年のソチ五輪8位。 同年の世界選手権後に引退、現在はプロスケーターとして活躍。 http://www.iza.ne.jp/kiji/sports/news/151010/spo15101012150032-n1.html
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