水中毒の危険性を医師が指摘 血中の塩分が減り死に至ることも

[水を飲み過ぎれば、死を招く!  『水中毒』という病]

(週刊女性PRIME  2015年6月22日)


代謝の促進、便秘の改善、血液サラサラ効果……など、水分補給は健康を促す
印象がある。

ところが、行きすぎた水分補給は嘔吐や痙攣、意識混濁を引き起こす
『水中毒』の原因となり、最悪の場合、死に至るという。
水中毒とはどんな病気なのか?
その症状は?
対策法は?
専門家がわかりやすく解説する。



<アルコール依存症に酷似>
『水中毒』……まだまだ一般には浸透していない病名だが、東京マラソンなど
マラソン大会のホームページでも、熱中症同様に注意が呼びかけられている。

「症状は意識混濁、頭痛、吐き気・嘔吐など。実にアルコール依存症に酷似
します。重症化すれば痙攣、昏睡となり死に至る。実は怖いのです」
東京・千代田区の『大手町アビエスクリニック』の早田台史院長は、症状を
そのように説明し、病気のメカニズムを次のように明かす。

「水分を摂取する量が、排泄する量を上回り、血液中のナトリウム濃度が低下
した状態、すなわち『低ナトリウム血症』になることをいいます」

水を大量に飲むことで血液が薄まり、血液中のナトリウム濃度が正常値以下に
なる『低ナトリウム血症』。

「血液中の塩分が減り、真水に近づいた状態になる。脳がブヨブヨになる
脳浮腫になり、昏睡・痙攣などを経て死に至ります」(早田院長)



<乳児がスポーツ飲料の多飲で『水中毒』になった症例も>
季節は今、梅雨から夏へ。
ペットボトルが手放せず、水分補給が度を超してしまう可能性は、誰にだって
ありうる。

神奈川・横浜の『こどもの木クリニック』の百々秀心院長は、「スポーツで
大量の汗をかき、同時に大量の水分をとると、『水中毒』が起こりえます。
子どもの場合、下痢や脱水症の治療として水分補給が大量になりすぎないか、
注意が必要。汗でナトリウムが失われ、水分だけを大量に補給すると
『水中毒』になる可能性があります。実際、体重11キロの子どもが、半年間
ほどほぼ毎日1日6リットル飲み『水中毒』になった事例があります。
7か月の乳児がスポーツ飲料の多飲により『水中毒』になった症例も報告
されています」



<「過剰な口渇感」「ダイエットやデトックスのため」が危険>
下図(1が正常の状態)に沿い、早田院長が詳しい説明を付け加える。
「ひとつ目のケースは、マラソンなどの激しい運動で発汗した場合。塩分の
薄い汗が出るので、水分と塩分が両方減少します(図2)。その際、塩分を
含んだ飲み水でなく、水のみで補給すると、低ナトリウム血症になります
(図3)。熱中症の初期症状と同じように、こむら返りや頭痛・吐き気などを
呈します。もうひとつは、過度の口の渇きにより必要以上に水分摂取した
場合。水分も塩分も不足していないところに、水分だけが加わった状態です
(図4)」

前者が悪化し死に至ることはほぼないが、後者は水を飲めば飲むほど
『水中毒』が進行する。
救急搬送される例は、こちらが圧倒的に多いという。

「特に神経疾患を持つ患者さんは、薬の副作用や過剰な口渇感でいくら
飲んでも満足が得られず、強迫観念で飲み続ける場合があります。ほかにも
糖尿病、心不全、腎不全、肝不全、重症感染症、甲状腺機能低下症などの
患者さんがかかりやすい」


早田院長はさらに視点を変えて、美容の陰に潜む『水中毒』の怖さを、次の
ように訴える。
「“ダイエットやデトックスのため”と、無理をしてがぶがぶ飲む人は気を
つけてください、ということです。頻繁にお手洗いに行けばまだいいものの、
排泄量以上に一心不乱に飲んでしまうと『水中毒』につながる恐れがあり
ます。『水中毒』を疑う目安として体重の変化が挙げられます。1日で
1~2キロ程度増えることは通常あるとしても、5~6キロも増えるのは
おかしい」



<脱水症と症状は同じでも治療は正反対>
百々院長によれば、初期症状は疲労感とだるさ。
やがて重症になり、嘔吐、頭痛、イライラ感、不安感を募らせるようになる。
さらに重症になると痙攣、脈の乱れ、神経の伝達が阻害されることで呼吸困難
などが出てくるという。

「『水分摂取過多』が原因の場合で軽症であれば、厳格な水分制限により、
ナトリウムの投与を必要とせずに数日で速やかに改善することが多い。重症に
なると、気道の保護、呼吸の管理、血圧の管理、痙攣の治療を必要とし、
治療期間は長引きます」と早田院長。

百々院長は、速やかな受診を促し、「水分を制限し、過剰な水分を排出する
ことは、病院でなければ対応できません」


加えて、脱水症との違いを次のように解説する。
「スポーツ時の頭痛、めまい、吐き気などの症状は脱水症の時にも起こり
ますが、『水中毒』は正反対の治療をします。水分をとりすぎたのか、
すぎてないのかはっきりせず、気分が悪くなりしばらく休んでも回復しない
時には、病院で診てもらったほうがいいです」



<水分摂取の適量とタイミング>
早田院長によれば、人間が1日に最低限必要な水分摂取量の目安は食事などで
とる分を合わせて2.5リットル~3リットルほど。

「基本的に健康な人は、特に注意する必要はありません。バランスのとれた
水分摂取を心がけるのは当然で、1日2~3リットルまでの水分摂取に
とどめましょう。自分の欲求に反して、無理に水分をとらないこと。“自分の
身体に正直に”が一番です。発汗過多に対しての水分補給では、塩分を含む
飲料水などを摂取し、『低ナトリウム血症』が起こらないように対応しま
しょう。スポーツドリンクによっては塩分量、糖分量が足らないものもある
ので、経口補水液がおすすめ。1リットルのペットボトルに塩3グラム、
砂糖40グラムをまぜると作れます」

塩アメや梅干し、塩そのものなどを意識的に摂取することも効果的な手立てに
なる。

水分の摂取のタイミングについて百々院長は、「のどが渇いた時に飲む、
でいいと思います」ときっぱり。

その根拠を、「スポーツの世界では、『のどの渇きを感じた時には脱水に
なっている』といわれて積極的に水分の補給がすすめられてきましたが、
最近では『のどに渇きを感じてから飲む』に変わってきています」

摂取の注意点の次は排泄について。
再び、早田院長。
「人間の膀胱は、250ミリリットル以上たまってくると尿意を催してきます。
1日の尿量目安は1.5リットルですから、1日に6、7回はお手洗いに行く
のが平均でしょう。『水中毒』を懸念するのであれば、少ない人は自発的に
行くように心がけてみてください」




http://news.livedoor.com/article/detail/10262067/





No tags for this post.
カテゴリー: え栄養医学, せ生理学 パーマリンク