日中血圧が低いグループでは、認知機能の低下が強かった

[過度な高血圧治療は認知症に悪影響を及ぼす?] (MEDLEY  2015年6月4日) <認知機能障害を持つ患者172人を追跡> 認知症は、「物忘れ」「見当識障害」などの症状に代表され、高齢化の進む 日本では重要な問題の1つです。 また、高血圧は、未治療の例を含めると国民の40%近くが罹患しているとも いわれている、最も罹患率の多い病気の1つです。 今回の研究では、多くの人に関わるこの2つの病気に意外な関連性が見つかり ました。 高血圧の治療において血圧が低いグループの方が、認知機能低下が早かったと いう結果が出ています。 <血圧と認知機能の低下との関連性を解析> 診察室での血圧、家庭での血圧や降圧薬の使用の有無が認知機能低下に影響が あるかどうかを解析するために、筆者らは以下の方法で研究しています。 2009年6月1日から2012年12月31日の間に、イタリアにある2つの記銘力 外来にて、認知症ならびに軽度認知機能障害を持つ患者を追跡調査した。 追跡期間の中央値は9ヶ月であった。 認知機能の低下は、追跡開始前と追跡中のMMSEの得点の変化と定義した。 認知症または軽度認知機能障害がある患者を対象に、およそ9ヶ月にわたってその後の経過を追跡しました。 認知機能の評価には、全世界で広く使われているMMSEという30点満点の 検査を用いています(日本では、長谷川式認知症スケールが頻繁に用いられ ます)。 軽度認知機能障害の定義としては、明らかな記憶障害はあるが、日常生活や 全般的認知機能は問題がない、といったことがあげられます。 <日中血圧が低いグループでは、認知機能の低下が強かった> 結果は以下の通りでした。 172人の患者を解析し、平均年齢は79歳(標準偏差5)、平均のMMSEは22.1 (標準偏差4.4)だった。 172人のうち、68%は認知症、32%は軽度認知機能障害を持ち、69.8%は 降圧薬にて治療されていた。 日中の収縮期血圧が下位1/3にあたる128mmHg以下のグループでは、 MMSEの変化は平均-2.8点 (標準偏差3.8)であったのに対して、中間1/3に あたる129-144mmHgのグループでは-0.7点 (標準偏差2.5、P=0.002)、 上位1/3の145mmHg以上のグループでは-0.7点(標準偏差3.7、P=0.003) と有意に128mmHg以下のグループでMMSEの変化が大きかった[…]。 以上のように、日中の血圧が128mmHg以下の良好な血圧なコントロールを 達成している群では、認知機能の低下が強いことが示されました。 筆者らは、「過剰な血圧の低下は、高齢者において認知機能の障害を起こして いるかもしれない」と結論付けています。 一般的に、高血圧は動脈硬化を促進し、脳の血管や心臓の血管を狭くする ことで、脳梗塞や心筋梗塞の原因となります。 これらを予防する為に降圧治療を行うわけですが、今回の研究では過度の 降圧は逆に認知機能に悪いとの結果が出ました。 血圧というのは平たく言えば「組織に必要な血液を届ける力」と言い換える ことができます。 もし低い血圧と認知機能の低下に因果関係があるならば、血圧が強すぎると 動脈硬化を起こし、一方で血圧が弱すぎると、脳に必要な血液が足りなくなり 認知機能に影響を与える、という説明ができるのかもしれません。 過度の降圧治療による、他の臓器に対する効果を調べるとより興味深い結果が 得られるかもしれません。 (石田 渉) https://medley.life/news/item/556e1b8542e56f77045256d4          No tags for this post.
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