[一病息災 お笑いコンビ 松本ハウス 統合失調症(5)
自殺未遂、幻覚 コンビ解散]
(読売新聞 2015年5月21日)
加賀谷は仕事の現場では頑張り続けた。
芸人の職を失いたくなかったからだ。
「面白い、と評価されていくのはうれしかった。でも、実は私の中に自分を
嫌い、『こんな体、ぶち壊してやる』という思いもあり、頭が矛盾でいっぱい
でした」
人気が出るほど、自己矛盾が膨らんだ。
ついに、自殺するつもりで、薬を大量に飲んだ。
卒倒して、半日後に目を覚ました。
次第に、仕事の時間が来ても、起きられなくなった。
遅刻をして、みんなに謝った。
泣きながら帰宅した加賀谷に、自殺を思いとどまらせるファクスが松本から
届いた。
相方は見抜いていた。
勝手な薬の調節をやめなかったので、ついに幻を見た。
自室の外から心配そうにのぞき込む松本。
ライフル銃を向けるスナイパーも現れ、一人でおびえた。
「つらいんだ」
母に電話で助けを求めた。同居した母は入院を勧めた。
「芸人をやめたら、人生が終わる」と抵抗したが、休む必要があるのは、
わかっていた。
相方の入院を告げられた松本は「1年かかっても、5年でも、10年でもええ。
またやりたいと思ったら一緒にやろう」と言った。
加賀谷は、松本と目を合わせることができなかった。
人気絶頂だったお笑いコンビが、結成8年の1999年暮れ、解散した。
https://yomidr.yomiuri.co.jp/article/20150521-OYTEW54950/