酒は飲まず、好物は餅に団子の毛利元就

[酒は飲まず、好物は餅に団子。名医の指導も受けた毛利元就]

(DIAMOND  2015年5月14日)
(長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉/小説家・料理人)


安芸(現在の広島県西部)という小さな国の領主から、一代で中国地方の
覇者となった武将、毛利元就。
勝率で考えると最も戦に負けない武将だったという説もある。
周辺に強力な大名たちがひしめき合う中、着実に勢力を広げ、やがて中国
地方をまとめた。

長生きは家系とよくいわれるが、元就の場合、父親も兄も若くして亡くなって
いる。
原因は酒の飲み過ぎ。
それを間近で見ていた元就は酒を飲まず、禁酒を家訓とした。
このことからも彼が健康に気を配っていたことがわかる。

もっとも禁酒は家訓ではあるが、他人に強要するようなことはなかった。

江戸時代の軍記物『吉田物語』には、もてなす時には酒好きには酒を、下戸
には餅を振る舞い、人心を掌握したとある。


餅や団子は元就の好物としても知られる。
今ほど調理技術が進んでいなかった中世では餅は贅沢品だが、消化がよい割に
腹持ちがいい。
栄養学的には餅は少し食べるだけで高いエネルギーを摂取することができる
のが特長。
ご飯1杯を食べることが難しくても、餅ならするりと食べられる。
喉に詰まるリスクには十分注意する必要があるが、食が細い人にも薦められる
食べ物だ。

最近、低炭水化物ダイエットなどの流行ですっかり悪者扱いの糖質だが、
脳にとって唯一の栄養である。
低炭水化物生活を長期間続けると、心筋梗塞や脳卒中にかかるリスクが高まる
危険性なども指摘されている。
医師や管理栄養士の指導なしの低炭水化物ダイエットは考えものだ。
それよりも適切な食事制限をし、運動をしたほうがいい。

元就は戦国時代一の名医、曲直瀬道三から指南も受けている。
『養生誹諧』にまとめられた道三の教えは「温かくて柔らかいものを」
「食べ過ぎずに腹八分目に」「旬のものをバランスよく」「年を取ったら
立ったり座ったりよく動いて」という現代でも十分に通用するものだ。


ちなみに1本では折れてしまう竹の矢も、3本合わせれば折れない。
元就といえばこの「三本の矢」のエピソードだが、これはどうやら後世の
創作である。
元就が家督を長男に譲った時に、兄弟それぞれに「三子教訓状」という手紙を
送ったことが、話のベースになったようだ。

元就が中国地方をまとめ上げた時、年齢は70歳を過ぎていた。
長生きは戦国の世で勝つために必須な要素なのだ。

また、元就の子孫は長州藩の藩主となり、後にその藩は明治維新の中心的
役割を果たすことになる。
歴史は続いている。
優れた人物は後々にまで影響を及ぼす、ということだろう。




http://diamond.jp/articles/-/71472?_ga=2.217370899.465375347.1521505282-400150117.1521505282





カテゴリー: え栄養医学, げ芸能人・有名人 タグ: , パーマリンク