思い通りの声が出せないけいれん性発声障害(SD)

[難病:話そうとすると声が出ない 分かりにくい障害、知って 
                        研究進める阪大の院生]

(毎日新聞  2015年05月07日)


<対人関係こじれ、いじめも>
思い通りの声が出せない「けいれん性発声障害」(SD)など、社会的な
認知度が低く、見た目で病気とみなされにくい難病を抱える患者の実態に
ついて、大阪大大学院生の野島那津子さん(31)が研究を進めている。

野島さんも同障害の疑いがあると診断された一人で、「どうすれば社会的
理解が進むのか研究を続けたい」と話している。


SDは、声を出そうとすると声帯が閉じて出なくなるか、出にくくなる障害。
近年の研究では筋肉の運動をつかさどる脳または神経系の異常が原因とされ、
少量の毒素を声帯に注射したり、声帯筋を除去したりする対症療法しかない。

症状に加えて患者を悩ませるのは知名度の低さだ。
患者団体「SDCP発声障害患者会」(千葉県市川市、田中美穂代表)に
よると、SDは表面的に異常がないように見られるため精神的なものと誤解
され、コミュニケーションの難しさから人間関係がこじれ、いじめの対象に
なるケースもあるという。
患者数は全国で4500〜9000人と推計されているが、潜在的な患者も相当数
いるとみられている。


医療社会学を専攻する野島さんは大学3年時に声が詰まるようになり、
飲食店のアルバイトを辞めざるを得なくなった。
対人関係でも悩むようになり、静養するために半年間休学し、SDの疑いが
あると診断された。
復学して大学院に進学後、自分と同様の境遇の人がどんな生活を送っているか
気になり、実態調査を始めた。


調査では、患者会など2団体の協力を得て全国のSD患者計15人に1年半
かけてインタビューし、今年2月に学会誌に論文を発表した。
診断を受けるまでSDのことを知らず、診断後は「治らないものの、説明
できることで一定の安心感を得た」と答える人が多かった。

現在は、調査対象を慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)や線維筋痛症など、
原因不明で見た目は病気とみなされにくい疾患にも広げている。
同じ疾患でも生活環境や症状の軽重によって悩みも違うことが分かってきたと
いう。


野島さんは最近、喉頭に腫瘍ができる喉頭乳頭腫も分かり、入院と切除手術を
繰り返す生活を余儀なくされている。
「患者の家族ら周囲にも話を聞き、社会的な理解を深めたい」と話している。



(入江直樹)



http://mainichi.jp/area/news/20150507ddf041040067000c.html





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