低血糖だと脳の処理能力が落ちる、言語能力の低下を確認

[注意! 低血糖だと脳の処理能力が落ちる、言語能力の低下を確認]

(Medエッジ  2015年4月9日)


<スコットランドの病院、1型糖尿病の人だけではなく健康な人も>
1型糖尿病の人も健康な人も、急性低血糖症を起こした状態では言語処理
能力が著しく落ちていると分かった。

英国スコットランドの王立病院ロイヤル・インファーマリー・オブ・エジン
バラを中心とした研究グループが糖尿病の専門誌ダイアベーツ・ケア誌で
2015年3月10日に報告した。



<危険な「急性低血糖症」>
急性低血糖症は、血液中の血糖値が異常に下がり、顔面蒼白、極度の疲労感、
めまい、ふるえなどが生じて日常活動が正常にできなくなる症状だ。
一般的に糖尿病で使う薬「インスリン」の効果が強く現れすぎると起こる
症状として知られている。

健康な人であっても、急な激しい運動、長時間の絶食、アルコールの飲みすぎ
などでも急性低血糖症が起きる。

糖尿病には、体を守る免疫の仕組みの異常が主な原因の「1型糖尿病」と、
生活習慣が主な原因の「2型糖尿病」がある。
特に1型糖尿病の人は、インスリンによる治療で急性低血糖症になりやすい。
血糖値を上げるホルモン「グルカゴン」「アドレナリン」などが正常に分泌
できない場合が多いからだ。

低血糖症は脳にもダメージを与えると言われている。

今回研究グループは、急性低血糖症が成人の作業記憶と言語処理能力に与える
影響を検証した。
作業記憶とは、心の中で情報を一時的に保ちながら同時に処理する能力で、
会話や読み書き、計算などの基礎となる能力だ。



<3つのテストで検証>
検証は、1型糖尿病の20人と健康な20人、計40人の成人を対象に
「グルコースクランプ」という方法で行われた。
これは、糖分を体に入れながらインスリンを持続的に体に注射し、血中の
グルコース濃度を一定に保つ方法だ。
本来のインスリンを出す力を見る方法として用いられるが、今回は血糖値を
一定に保つ試験を実施している。

低血糖症(血中グルコース濃度:45mg/dL)で1時間、または正常血糖
(81mg/dL)で1時間グルコースクランプした後、3種類の言語テストを
受けてもらった。
  (1)リーディングスパンテスト
  (2)セルフペーストリーディングテスト
  (3)主語動詞一致テス
トの3つを行い、低血糖症と成績との関連性を解析した。

「リーディングスパンテスト」は、提示された短い文章を音読しながら、
提示された言葉を覚える。
いくつか文章を読んだ後に、提示された言葉を思い出してもらうというもので
「作業記憶」能力が問われる。
「セルフペーストリーディングテスト」は、断片化して読み取りづらくした
文章(かき混ぜ文)を単語の意味などを手がかりに読んでもらい、かかった
時間や理解力を調べるテスト。
「作業記憶」と「言語処理能力」が問われる。
「主語動詞一致テスト」は、単数形、複数形、三人称などが正しく使えて
いるか調べるテスト。
「言語処理能力」が問われる。



<作業記憶も言語処理能力も低下>
正常血糖のときと低血糖のときでテスト成績を比較した。
その結果、低血糖症を起こした状態では、リーディングスパンテストと
主語動詞一致テストの結果が極めて悪く、正答率も落ちていた。

また、セルフペーストリーディングテストでは、1つ目の文章の断片を読む
時間が長くかかっていた。
特に2つ目の断片では、1型糖尿病よりも健康な人の方が読むのに時間が
かかった。
文章の理解力や質問に答える時間には、低血糖症は大きく影響して
いなかった。


今回の検証により、中程度の急性低血糖症により、日常生活で必要な
「作業記憶」と「言語処理能力」が落ちると分かった。

やはり十分な注意が必要ということだろう。



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