[池波志乃さん あごの骨髄炎(4) 11時間半に及ぶ難手術]
(読売新聞 2015年3月19日)(一病息災)
11時間半に及ぶ、本当に長い手術になった。
のど元から切開し、虫歯菌が侵食して炎症で壊死した左の下あごの骨を、
医療用ノコギリで切り取った。
そこに、自分の肩甲骨の一部を切り取り、移植した。
顔がゆがみ、変形する可能性もあることを、医師から事前に伝えられていた。
53歳の女性として、決断が迫られる難手術だった。
ようやく歯とあごの痛みから解放されたが、肩の骨を切ったので、左手が
動かなくなった。
今回も芯の強さを発揮し、1か月の懸命なリハビリを続けた。
今ものど元に残る傷痕が、大変な手術だったことを物語る。
「実は、まだ唇の感覚がないので、鏡を見ないと口紅がつけられません」
女優の仕事からは離れているが、テレビ出演は続いている。
夫婦での登場依頼にも応じる。
時々、エッセイストとして筆をとる。
そして、主婦の仕事。
得意な料理作りには、さらに磨きがかかり、「家事も、掃除、洗濯など、
みな良い美容体操になるので、若い頃から苦になりません」。
夫婦それぞれに経験した大病を乗り越え、ちょうど今日、還暦を迎えた。
沖縄通いも続けているが、「夫婦2人で鈍行列車に乗って、ゆっくり国内
旅行をしようと思っています」。
(文・斉藤勝久、写真・飯島啓太)
http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=114836&from=popin