孔子がこだわった精白米に自家製の酒、生姜

[孔子がこだわった精白米に自家製の酒、ショウガ]

(DIAMOND  2014年11月13日)
(長寿の食卓~あの人は何を食べてきたか~ 樋口直哉/小説家・料理人)


『論語』は経営の神様と呼ばれる渋沢栄一が愛読していたことでも知られ、
経営者の経典と呼ばれている。

今でも経済誌などで定期的に特集が組まれる『論語』は、孔子の発言を弟子
たちが集めた選集だ。
成立は孔子の死から約150年後。
当初は入門書のような位置付けで評価は低かったそうだが、長らく読み継がれ
やがて古典の一つとなった。


孔子は長寿でも知られる。
没年齢の74歳は春秋戦国時代ということを考えれば、かなりの長命だ。
『論語』の「第十郷党篇」からは食にこだわりを持っていた様子がうかがえ
る。
精白された飯を好み、魚や肉は傷んだもの、色や臭いが悪いもの、季節外れの
ものは避けた。
煮込み過ぎた肉や失敗した料理も食べない。
肉の量は多いときでも飯の量を超えないようにし、酒は自家製にこだわり、
市場で買ったものは飲まないようにしていた。

変わったところでは食事中は話をしない、というこだわりも。

注目されるのは添え物のハジカミ(ショウガ)は捨てずに食べる、と書かれて
いることだ。
孔子は毎日、ショウガの副菜を取ることも勧めている。
ショウガの薬効は古くから知られ、明時代に書かれた薬学書『本草綱目』では
「しょうがは百邪を防御する」とある。

現代でもショウガに含まれるジンゲロールやショウガオールには、体を温める
作用があると女性に人気だ。


ショウガが健康によいとされているのは東洋だけではない。英語で「Ginger」
といえば「元気」「気力」といった意味で、14世紀、英国でペストが流行した
時にはよくショウガを食べていた人は生き残ったという話もある。


このところ西洋医学では解決できない体の不調に東洋医学が注目されて
いるが、最近は抗がん剤の副作用を抑える働きがあるのではないか、と期待
されている。
漢方ではナツメと組み合わせることで他の生薬の副作用を抑えると昔から
言われているので、西洋医学の世界で証明されることになれば面白い。


健康に注意を払い、長生きした孔子だが、人生はなかなか思い通りには
いかなかったようだ。
孔子が目指したのは仁(人間愛)と礼(規範)に基づく国家だったが、
残念ながらその考えが政治に生かされることはなかった。
一時期、ある程度の地位までは上り詰めるが政治改革に失敗し、失脚。
その後、亡命を余儀なくされ、弟子と共に流浪の日々を送る。
さまざまな場所で仕官を求めるが、彼を用いる者はいなかった。
13年後、69歳にして国に戻るが、政治をする立場には就けなかった。
やがて、信頼していた弟子も失い、失意の晩年を過ごし、亡くなる。

ついに孔子は理想をかなえられなかったが、その教えは今も日本で生きて
いる。
孔子の子孫は直系を除くと現在400万人を超すという。
虎は死して皮をとどめ、人は死して名を残す。
今でも『論語』が愛されていることは孔子を満足させるに違いない。




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