日本住血吸虫(風土病)(地方病)

[日本住血吸虫]

(Wikipedia)


日本住血吸虫は、哺乳類の門脈内に寄生する寄生虫の一種である。

中間宿主は淡水(水田や側溝、ため池)に生息する小型の巻貝のミヤイリガイ
(別名カタヤマガイ)。

最終宿主はヒト、ネコ、イヌ、ウシなどの様々な哺乳類である。

日本住血吸虫がヒトに寄生することにより起こる疾患を、日本住血吸虫症と
いう。


<生活環>
最終宿主動物の糞便とともに排出された卵は、水中で孵化し繊毛をもつ
ミラシジウム(ミラキディウム)幼生となる。

ミラシジウム幼生はミヤイリガイの体表を破って体内に侵入し、そこで成長
するとスポロシスト幼生となる。
スポロシスト幼生の体内は未分化な胚細胞で満たされており、これが分裂して
胚に分化し、多数の娘スポロシスト幼生となってスポロシスト幼生の体外に
出る。

娘スポロシスト幼生の体内の胚細胞は、長く先端が二又に分岐した尾を持つ
セルカリア 幼生となって娘スポロシスト幼生と宿主の貝の体表を破って
水中に泳ぎ出す。

ミヤイリガイは水田周辺の溝などに生息しており、その水に最終宿主が皮膚を
浸けたときに、セルカリアがその皮膚から侵入し感染する。

その後肝臓の門脈付近に移動して成体となる。
成体は成熟すると雌雄が抱き合ったまま門脈の血流をさかのぼり、消化管の
細血管に至ると産卵する。
卵は血管を塞栓するためその周囲の粘膜組織が壊死し、卵は壊死組織もろとも
消化管内にこぼれ落ちる。



<日本住血吸虫病の症状>
まずセルカリアが侵入した皮膚部位に皮膚炎が起こる。次いで急性症状と
して、感冒様の症状が現れ、肝脾腫を認める場合もある。

慢性期には虫が腸壁に産卵することから、発熱に加え腹痛、下痢といった
消化器症状が現れる。

好酸球増多も認められる。

虫卵は血流に乗って様々な部位に運ばれ周囲に肉芽腫を形成するが、特に
肝臓と脳における炎症が問題になる。
肝硬変が顕著な例では、身動きができないほどの腹水がたまる症状が出て、
死に至る。

このように日本住血吸虫が重篤な症状を引き起こすのは、成体が腸の細血管で
産卵した卵の一部が血流に乗って流出し、肝臓や脳の血管を塞栓することに
よるところが大きい。



<日本における過去の有病地>
日本では、古くから
 ・山梨県の甲府盆地底部
 ・福岡県、佐賀県の筑後川流域
 ・広島県深安郡旧神辺町片山地区(現:福山市)
の風土病として知られていた。

最大の有病地である山梨県ではこれを「地方病」と呼んだ。

山梨県では、日本住血吸虫対策を行ったことで、肝硬変による死亡率が
約2/3にまで激減した。







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