「アルコールハラスメントやめて」母の叫び 後絶たぬ若者の死亡

[「アルハラやめて」母の叫び 後絶たぬ若者の死亡事故]

(東京新聞  2014年3月18日)


飲酒を断れない雰囲気をつくるアルコールハラスメント(アルハラ)による、
若者の死亡事故が後を絶たない。
2年前、大学のサークルでの飲酒後に亡くなった1年生の男性=当時(20)
=の母親(50)は、今も心の傷が癒えない。
4月は新入生歓迎コンパの季節。
「なぜ死ぬまで飲まなければいけなかったのか」を問い続ける母親は、啓発
DVDに出演し、アルハラ防止を呼び掛けている。
(山本真嗣)


目の前には4つのグラスと焼酎の瓶。
上級生3人の前で男性はつがれた焼酎をストレートで飲み、グラス全てを
空けた。
近くの段ボール箱に吐いた後、再び上級生が注ぎ、それを飲む。
15分で720ミリリットルを、ほぼ1人で飲み干した。

2012年3月、千葉県内の民間の宿泊施設で開かれた大学のテニスサークルの
春合宿の打ち上げ。
母親は部員たちから聞いた酒宴の異様さに耳を疑った。
部員ら約80人が参加し、男子全員でカップ酒(180ミリリットル)をいっき
飲み。
その後はワインや焼酎などが続いた。
男性は翌朝、布団の中で吐いたものを喉に詰まらせた状態で見つかった。
病院に運ばれたが、死亡が確認された。窒息死だった。

夫と病院に駆け付けると、変わり果てた長男の姿があった。
着ていたシャツやスエットは吐しゃ物や排せつ物にまみれていた。
「こんなになるまで…。一体、何があったのか」

事実解明を求める両親に対し、大学が4月にまとめた報告書では、打ち上げ
当日の事実関係の記述はA4判の2ページだけ。
集団心理やゲーム感覚、「誤った伝統」による過度な飲酒は認める一方、
「飲酒の強要は認められない」とした。
やり場のない怒りと悲しみ。
「息子は勝手に飲んで、勝手に死んだのか。そんなはずはない」

何人もの部員に話を聞くうち、焼酎をついだ先輩の1人が言った。
「飲まなきゃいけない、つがなきゃいけない雰囲気だった。皆そうして
きた」
長男は何度も吐く姿を目撃された。
その異常さに誰も気付かなかったのか。
もっと早く救急車を呼んでくれれば…。

母親は長男の死後、長男が生前に使っていた部屋で寝ている。
あおむけになると、はにかんだ笑顔の遺影が目に入る。
「おはよう」「おやすみ」
毎日、話し掛けている。

事故後、サークルは解散した。

だが、他の大学で同様の死亡事故が続くと、胸が張り裂けそうになる。
「息子は命を懸け、アルハラの“伝統”を止めた。こんな悲しい思いをするのは
終わりにしてほしい」

飲酒事故で子を亡くした親らでつくる「イッキ飲み防止連絡協議会」
(東京)によると、死者が出る飲み会には、
  ・上下関係など断れない場の空気がある
  ・濃い酒を速く飲ませる
  ・酔いつぶれた人を放置する
との共通点がある。

同協議会は今春、これらを学生向けに解説した啓発用DVD(税抜き2万円)を
制作。
この母親も出演し、責任ある行動を呼び掛けている。
学生らが「怖い」と感じた飲み会のエピソードや事例も募り、ホームページで
掲載する予定だ。
問い合わせは事務局へ。



<「飲酒自粛」要請する大学も>
NPO法人「アルコール薬物問題全国市民協会」の集計では、この5年で
少なくとも16人の学生ら10〜20代の若者が、急性アルコール中毒などで
亡くなっており、各地で対策が進んでいる。

名古屋商科大(愛知県日進市)は全てのクラブやサークルに、飲み会に
未成年が含まれる場合の対策を提出させている。
飲酒するグループと完全分離する「分酒」や、アルコールを一切出さない
クラブも。

筑波大(茨城県つくば市)は、各クラブに新入生歓迎コンパでは成人も含めて
アルコールを自粛するよう要請。

昨年7月に死亡事故のあった北海道大では、北大病院に急性アルコール中毒で
学生が搬送された場合は大学に通報、退院後に個別指導している。


同協会が昨年7月、748大学に実施したアンケート(回収率43%)では、
学内での飲酒を全期間禁止したのは56%、学園祭だけ禁止が11%あった。




http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/health/CK2014031802000174.html




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