オピオイドは浮遊するがん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞を妨害

[麻酔法の違いが乳がん手術後の生存率に影響]

(HealthDay News  2013年10月15日)

乳がん手術時に用いる麻酔法が、がんの再発率と生存率に影響を及ぼす
可能性があることを、デンマーク、オーフスAarhus大学病院の研究
グループが報告した。

研究を実施したPalle Steen Carlsson氏によると、乳がん患者77人を対象と
した小規模研究で、6年間の追跡の結果、全身麻酔と神経ブロック注射を併用
した患者では13%にがんの再発がみられたのに対し、麻酔のみの患者では
37%だったという。
また、死亡率は併用群では10%、麻酔単独群では32%だった。

この知見は、米サンフランシスコで開催された米国麻酔学会(ASA)年次
集会で発表された。

がんの手術時には、血液中に遊離した腫瘍細胞がリンパ節や他の臓器に付着
することがある。
免疫系がそのような細胞を攻撃するが、手術や麻酔によって免疫系の作用が
低下する。

神経ブロックと麻酔を併用すると予後が向上する理由は明確にはわかって
いないが、1つの仮説として、術中や術後の痛みを十分に緩和すると、手術に
対するストレス反応が軽減すると考えられると、Carlsson氏は説明している。

また、術後に使用する麻薬性鎮痛薬の量を抑えられるために、がんの拡大
リスクが低減する可能性もある。
オピオイドには浮遊するがん細胞を攻撃するナチュラルキラー細胞を妨害する
作用があるという。

今回の研究では、全身麻酔して脊椎脇へ生理食塩水を注射する群と、全身
麻酔と局所麻酔注射(脊椎傍ブロック)を併用する群とに無作為に割り
付けた。

再発率と生存率の差のほか、6年後の医療記録から、併用法を用いた女性は
疼痛緩和のために必要とするオピオイドの使用が少ないことが判明した。

これまでの研究でも、過去の医療記録から、全身麻酔と局所麻酔の併用により
乳がんの再発と拡大のリスクが4分の1に減少することが示されていたが、
前向き研究は今回が初めてという。

米シティ・オブ・ホープ総合がんセンター(カリフォルニア州)のMichael
Lew氏によると、この知見は近年、麻酔医の間で注目されているという。
現在、米クリーブランド・クリニックを中心に1,100人強の乳がん患者を
対象とした5年間にわたる臨床試験が進行しており、さらに多くの情報が
まもなく得られることが期待される。
それまでは、乳がん手術を受ける女性は、オピオイドの使用をできる限り
少なくした全身麻酔を希望することを医師に伝えるようにと、同氏は勧めて
いる。

なお、学会発表された研究は、ピアレビューを受けて医学誌に掲載される
までは予備的なものとみなされる。

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