小4での色覚検査、中止から10年 異常知らず進路選択、トラブルも

[小4での色覚検査、中止から10年 異常知らず進路選択、トラブルも]

(産経新聞  2013年9月30日)


小学校で義務付けられていた色覚検査が廃止されて10年。

色覚異常の子供の約半数が異常に気づかないまま進学・就職に臨み、中には
直前で進路を断念せざるを得ないケースもあることが、日本眼科医会の調査で
明らかになった。

保護者の同意があれば今も色覚検査はできるが、希望調査すら実施しない
学校がほとんどという。

同会は「希望者が学校で検査できるようにしてほしい」と訴えている。
(平沢裕子)



<「差別」と撤廃>
色覚異常は主に染色体の劣性遺伝により、男性で20人に1人、女性で500人に
1人の割合で現れる。

色が見分けにくく、赤と緑、赤と黒、ピンクと灰色などの識別に困難を
生じる。

6割以上は軽い症状とはいえ、有効な治療法がなく、近視や遠視のように眼鏡
での矯正もできない。

かつて、小学4年生を対象に学校で色覚検査が行われていた。
しかし、「色覚検査をすることは差別につながる」などの声が挙がり、
平成14年に学校保健法を改正、検査の施行義務がなくなった。

任意で検査を行う場合は保護者の同意が必要とされ、平成15年度以降、
ほとんどの学校で検査が実施されなくなった。

同会の宮浦徹理事は「検査義務がなくなったことを『検査はやっては
いけない』と思った先生もいたようだ。

検査が実施されなくなったことで教職員の色覚異常への関心が薄れたように
感じる。
平成15年以降に先生になった人では色覚異常について正しい知識を持たない
人も少なからずいる」と指摘する。



<進学・就職の受診で>
同会は平成22~23年度、全国の眼科診療所の協力を得て、色覚異常のある
941人を対象に聞き取り調査を実施。

学校での色覚検査が中止された以降に小学4年生になった中高生の45%が
眼科受診時まで自身の異常に気づいていなかった。

高校生では約7割が進学・就職のための受診だった。

「異常を感じたことがなく、高校入学後に検査で異常が分かった。もっと
早く分かっていたら進路を決めるときに違っていただろう」(工業高・電子
機械科の17歳男性)、「海上の仕事に就きたいが、受験資格に色覚があった。
人と見え方が違うことはうすうす気づいてはいた。就職・進学に支障があると
したらショック」(17歳男性)など、進路がほぼ固まった後に異常を指摘
され、とまどうケースも報告されている。

また、「色の間違いをして先生に『ふざけてはだめ』と注意された」「地図の
色で判断する問題が誤答だった」「黒板の赤のチョークが見にくい」など、
学校現場で色覚異常の子供への対応が十分なされていない様子もうかがえた。

同会は、学校での色覚に関するトラブルを避け、進路に対応するためにも
希望者には小学校低学年と中学1〜2年で検査を実施するのが望ましい、との
見解をまとめた。
10月にも文部科学省に申し入れる。

宮浦理事は「自らの異常に気づかないまま、現在、大学生になっている人も
少なくない。就職や実際の就業の現場でトラブルとなることも予想される
だけに、検査を受けることを勧めたい」と話している。



<操縦士など職業、資格で制限も>
色覚異常があっても日常生活では支障がない人がほとんどだが、安全上の理由
などで「色覚が正常であること」を求められる職業がある。
  ・飛行機や船舶の操縦士
  ・鉄道の運転士
  ・消防士
  ・フグ調理師
などだ。

就職時に制限がない場合でも、
  ・染み抜き作業時、シミの色が区別できない(クリーニング店)
  ・刺し身の鮮度が分かりにくい(飲食店)
  ・入所者の顔色が判別しにくい(福祉施設)
など就職してから困惑するケースも見受けられる。

子供の色覚異常に気づかない保護者も多い。
  ・お絵描きで顔を緑色に塗る
  ・犬やハンバーグを緑という
  ・焼き肉で焼けているか聞いてから食べる
  ・黒板の赤いチョークを読み飛ばす
などは色覚異常の可能性があり、眼科での検査が勧められる。



http://sankei.jp.msn.com/life/news/130930/bdy13093008200000-n1.htm




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