ハリウッド・スターの光と影——マイケル・J・フォックス

[ハリウッド・スターの光と影——マイケル・J・フォックス]

(Business Media 誠)


マイケル・J・フォックスが手の震えに気づいたのは、1990年秋、29歳のとき
である。
翌年にかけて何人もの医師の診察を受け、自分がパーキンソン病であることを
知る。
通常は高齢者に多い病気で、彼の場合は数が少ない若年性パーキンソン病
だった。

幸い、彼の症状はパーキンソン病としては、比較的軽いものであったが、
それでも、人前で演じる俳優という職業を続ける上では、大きな困難を
もたらすことは明白だった。
医師からは「あと10年くらいは俳優としてやっていけるかもしれない」と
言われたが、仮に10年持ちこたえたとしてもまだ39歳だ。それ以降は
いったい……!?

この過酷な現実と、彼はどう向き合ったのか。



<病とストレス、そしてアルコール依存症・・・>
マイケルは、パーキンソン病とはすなわち、自分や大切な家族から多くの
ものを奪い去ろうとする存在であるとみなし、そうした状況を受け入れる
ことに抵抗した。
そして、あらゆる問題を自分ひとりの心の中に押さえ込もうとする。

家族やごく一部の人にだけ病気のことを打ち明けたものの、日常生活に
おいては、妻のトレイシーや子供たちにも具体的な症状やそれに伴う日々の
悩みや苦しみを話そうとしなかったようだ。
家族までそんな病気に巻き込みたくないという彼ならではの配慮だったの
だが、「病気=日常生活」となっているマイケルにとって、病気の話を
しないことはすなわち、日常のよもやま話を家族と一切交わさないという
“コミュニケーションの断絶”を意味した。

映画やテレビ番組の収録がある場合は、薬が効き始めた頃(=比較的、症状が
治まっている時間帯)に収録が始まるよう、時間を綿密に計算して薬を服用
するなど、細心の注意を払い続けた。
病気がばれてスキャンダルに発展したり、その結果として、失職することを
恐れていたのだ。

しかしそれはマイケルにとって、誠実で信頼すべき仕事仲間たちや自分を
支えてくれる多くのファンを欺くことであり、自分自身を欺くことでもあった
ろう。
公私にわたる孤独な闘いの日々。
いつもイライラし、酒に溺れて、アルコール依存症はさらにひどくなり、
些細なことでも周囲に当り散らすようなことが多くなった。

しかし、そうした緊張とストレスに満ちた生活こそが、パーキンソン病の
病状をいっそう悪化させていること、そして大事な家族との関係を危機に
陥れていることに彼は気づく。


1992年、まず断酒して、アルコール依存症の治療に取りかかり、前向きな
一歩を踏み出した。
時間はかかったが、パーキンソン病に関しても、次第に見方を変えてゆく。
この病気は、自分や家族から多くを奪う存在ではない。
自分はあくまでも自分であり、そこにパーキンソン病というファクターが
ひとつ付加されただけなのだと。



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