リハビリ ポリオとともに:4 右足の動きも悪くなる

[患者を生きる リハビリ ポリオとともに:4 右足の動きも悪くなる]

(朝日新聞   2012年7月29日)


大阪市の歯科医師、青木秀哲さん(47)は「ポストポリオ症候群」という
病気を、本で知った。
ポリオの患者が年齢を重ねるうち、再発ではなく2次障害として、麻痺などの
症状が悪化するという。

生ワクチンの副作用で生後10カ月で発症したものの、「左足の麻痺以外は、
何の支障もなく暮らしている」との自負があった。
ただ、垂れ下がった左足のつま先を持ち上げる手術を何度もしながら、あまり
効果がないことは、気になっていた。


ポリオの患者団体が医師らとつくった、ポストポリオ症候群の研究報告などを
読んでみた。
ポリオの麻痺は、ウイルス感染で神経細胞が死ぬために起きる。
若いうちは、生き残った神経細胞が死んだ細胞の分も働くため、動かなく
なった筋肉が少しずつ動いて症状が安定する。
ところが中高年になると頑張りすぎたつけがまわり、筋力の低下や手足の
しびれ、痛みなどの症状が現れる。
どうやら、こんな仕組みがあるらしい。

診療などで人一倍動き回ってきた自分も「ひとごとではない」と思った。

ポリオ患者やポストポリオ症候群に詳しい医師は少ない。
和歌山県立医大病院リハビリテーション科がこの病気の診察やリハビリに力を
入れていることを知った。

2006年2月に同科を受診。
両方の手足の筋力などを詳しく測ってもらいながら、医師に不安を訴えた。
親身に聞いてくれる医師に出会えて、心強かった。

同じころ、患者会「ポリオの会」に入会。
仲間と新しい知見について学び合う場を得た。


2009年秋、石川県の大学病院に移り、講師となった。
数時間立ちっぱなしの手術もこなすうち、左足だけなく右足の動きも悪く
なっていることに気付いた。

翌年春ごろ、和歌山県立医大病院で調べると、右ひざを伸ばしたり曲げたり
する筋肉の力が低下していた。
主治医の幸田剣さん(36)は、似たような症状が出る別の病気でないことを
確認し、「ポストポリオ症候群です」と告げた。

ある日の診療で、左手に持っていた鏡を落とした。
「歯科医をいつまで続けられるだろう」
不安が広がっていった。





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