虫歯と酸蝕歯との関係

[虫歯と酸蝕歯との関係]


<虫歯の基礎の基礎>
無菌動物には齲蝕(虫歯)が発生しないことから、口腔内細菌が齲蝕発生に
必要です。

一方、「発酵性糖質」(口腔内細菌が利用し酸を産生可能な糖質)をほとんど
摂取しないイヌイット(エスキモー)に齲蝕が少ないことから、発酵性糖質も
齲蝕発生に必要だろうと考えられています。

実は解っているのはそれだけで、ミュータンス菌だけで虫歯を語れるわけでは
ありません。



<酸産生細菌も酸には弱い>
低pH環境(酸性環境)は、細菌内部の酸性化も生じます。
代謝酵素が阻害されたり、細胞質が変性したりして、やがては酸性死に至る
こともあります。

酸産生細菌はこれに対抗するために、細菌内部からの酸排出を行ったり、細菌
内部でアルカリ性物質を産生したりして、細菌内部の酸性化を防いでいます。

しかし、これらの対抗策は、自分自身が産生する酸の量に対しての防衛策
です。

想定以上の低pH環境では、酸産生細菌でさえも生きられずに死滅します。

重度の酸蝕歯(酸蝕症)の人の口腔内には、プラーク(歯垢)ひとつない
ピカピカの歯が並んでいます。
但し、酸蝕によって歯の形態は脱灰変形していますが。



<虫歯と酸蝕歯との関係>
従来の齲蝕(虫歯)の発生理論「酸脱灰説」だけでは、虫歯と酸蝕歯との
関係を説明できません。

酸蝕歯は酸に接触した面から歯質が溶解して行きます。


一方、酸産生細菌が産生した酸が虫歯を作るはずなのに、エナメル質最表層は
虫歯にならずに中間層から虫歯が始まります。
何とも不思議な現象です。

内部は虫歯によって大きな空洞があるのに、エナメル質最表層だけが残って
いるので、患者さんが小さな虫歯だと勘違いする原因になる現象です。
虫歯が歯槽骨の下まで進行していて抜歯の適応症なのに、エナメル質最表層
だけによって歯の形態を保っていることさえあります。



虫歯の最大の原因は、実は栄養障害(栄養失調)なのです。



[参照]
・口腔生化学



(横山歯科医院・横山哲郎)




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