女性と病気 線維筋痛症:5 娘を抱っこする夢かなう

[女性と病気 線維筋痛症:5 娘を抱っこする夢かなう]

(朝日新聞  2011年9月5日)


線維筋痛症に悩まされてきた吉田裕子さん(40)は、勉強会に参加したのを
機に、病気と向き合う気持ちが強くなった。

2007年秋、脳から出る痛みの信号を邪魔する薬「リリカ」が、線維筋痛症の
薬として米国で認可されたことをインターネットで知った。
慢性的な痛みの薬などとして世界100カ国以上で販売されていたが、日本では
認められていなかった。

寝たきりから脱し、車いすで行動できるようにはなったが、激しい痛みで
寝込むこともしばしば。

「もしかしたら、効くかもしれない」
リリカを使った患者の話を聞き、後ろめたい気持ちを抱えつつ、わらにも
すがる思いで個人輸入した。
25ミリグラム入り56錠が、1万6800円だった。

2008年1月5日の晩、耐えきれないほどの痛みが体を襲った。
「試すなら今しかない」
思い切って、リリカを1錠飲んだ。
翌日には焼けつくような痛みが消え、翌々日の朝は何年かぶりにさわやかな
目覚めを迎えた。

当時は、胃腸薬や漢方薬を合わせて10種類ほどの薬を飲んでいた。
しかしリリカの服用をきっかけに、痛みの変化を10段階評価で記録した
「服薬日誌」をつけ始めた。
不必要な薬を判別し、少しずつ減らした。

ある日、小学3年になった次女を抱いてみた。
鋭い痛みが走ったが、短時間なら我慢できた。
「えっ、お母さん、抱っこしても大丈夫なの?」
驚く次女の声を聞き、やっと夢がかなったと実感した。


リリカは2010年10月、線維筋痛症ではなく、手や足などの末梢神経に出る
疼痛の薬として日本でも認可された。

いまは熊本市内で開業した坂田研明医師のクリニックに月1回通い、
「神経性の疼痛」の症状に対してリリカを処方してもらっている。


線維筋痛症友の会九州支部長の吉田さんのもとには、多いときには日に数件の
相談が寄せられる。
「患者会に来れば、自分に似た症状の治療や対処法に出合えるかもしれない」
と呼びかけたい気持ちはある。
しかし、患者ごとに複雑な事情があるので口に出すことはしない。

じっくり話を聞き、最後にこう語りかける。
「つらいけどあきらめず、ゆっくり一緒に歩んでいきましょう」




http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201109040090.html





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