女性と病気 線維筋痛症:1 子に抱きつかれ電撃走る

[女性と病気 線維筋痛症:1 子に抱きつかれ電撃走る]

(朝日新聞  2011年9月1日)


2002年2月の寒い朝。
熊本市に住む吉田裕子さん(40)は、肩のあたりに奇妙な痛みと全身の
倦怠感を感じた。
3番目に授かった次女(10)が、1歳になる直前のことだった。

「肩こりとも違うし、微熱もある。風邪かな」
数日間安静に過ごしたが、痛みは全身に広がっていった。

近くにあるかかりつけの内科医院で鎮痛薬をもらい、3日間飲んだ。
しかし変化はない。

かかりつけ医は「リウマチとは違うが、体のあちこちが痛い。同じような
患者さんが昔いて、ステロイドを何年か続けたら治ったもんね」と言った。
診断がつかないまま、とりあえずステロイド剤に切り替えた。

ところが1週間後、薬の量を減らすと痛みが倍になった。

食事を作るのも洗濯もつらく、横になっても刺すような痛みから逃れ
られない。
神経がむき出しの電線に置き換わったかのようで、人が歩くわずかな振動すら
ビリビリした痛みに感じた。

ある日、次女が不意に腰に抱きついて来た。
全身に電撃が走った。
「ひあーっ、お願いだけん、ちょっとやめてえ」
思わず悲鳴を漏らした。
当時小学1年生だった長女(16)が、よちよち歩きを始めたばかりの次女に
言った。
「さわっちゃ駄目、お母さん痛いから」


24歳で結婚して調理師の仕事をやめ、平穏に暮らしてきた。
娘2人、息子1人にも恵まれた。
その子どもたちが自分を腫れ物に触るかのように見ている。
「このままずっと、子どもを抱っこできんとかなあ」
自分の状態に愕然とした。


半年間かけて3つの総合病院を次々に回った。
リウマチ担当医がいる整形外科、血液内科、膠原病内科、神経内科……。
痛みをこらえて数多くの検査を受けたが、異常は見つからない。


病名のヒントは思いがけない所にあった。
2002年10月、「線維筋痛症友の会が横浜で発足した」という新聞記事を
見つけたかかりつけ医が、電話で知らせてくれた。
聞いたこともない病名だが、症状は自分と同じだ。

「原因不明」という言葉が気になったが、「絶対にこれだ。病名がわかれば
何とかなる」と思った。
そのまま寝たきり状態まで進むとは、当時は想像もしなかった。



(斎藤義浩)




http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201108310156.html?ref=reca





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