運動器 変形性股関節症(5) 3度の手術乗り越え

[運動器 変形性股関節症(5) 3度の手術乗り越え] (朝日新聞  2010年8月21日) 横浜市青葉区の金岡早苗さん(55)は1999年、人工股関節への置換手術を 受け、つえなしで外出できるようになった。 脱臼や骨折を防ぐため、自転車に乗らず、激しい運動は避けた。 昭和大藤が丘リハビリテーション病院での毎年の検診に足を運んだ。 筋力をつけるため、退院後は1日1〜3回、自宅で1時間ずつリハビリを した。 しかし、2005年11月、検診で異変が見つかった。 同病院の診察室で、近藤宰司医師が深刻な顔つきで切り出した。 「骨が溶けだしているようです」 X線写真に写った大腿骨の輪郭は、雲がかかったようにぼやけていた。 人工関節の金属が体内に溶け出し、体が異物に反応して骨との接合部が ゆるみはじめる「骨融解」だった。 半年間、様子をみた近藤医師は「早めに入れ替えた方がいい」と判断した。 痛みも違和感もない。本当に必要なのか。 金岡さんは信じられなかった。 でも、融解がさらに進む前の今なら、手術の負担は少ないと言われた。 仕方なかった。 2006年11月に入院。 前回の手術以降、人工関節と骨が早くつながるとわかり、入院は2週間で 済んだ。 今回は、金属が溶け出さないセラミックとポリエチレンの人工関節に 置き換えた。 再置換率は20年で1割以下だが、ポリエチレンはすり減りやすく、 セラミックもまれに割れるおそれがある。 やはり将来は、置換手術の可能性が残るとのことだった。 手術は無事に終わり、2カ月後にはつえもとれて、手術前の生活に戻れた。 2009年4月、都内の私立高校の教壇に、数学講師として再び立った。 13年ぶりだった。 「先生、わかったよ」 2次方程式や因数分解の問題が解けたと喜ぶ生徒たちの姿に励まされた。 「以前は病気だから何をしてもだめ、とすべてに消極的だった。 見ていてつらかった」と長女の典子さん(29)は振り返る。 変形性股関節症は一生つきあうしかない。だから悲観的になることもある。 でも、3度の手術を乗り越えた金岡さんは実感する。 「逃げずに向き合い、自分にあった治療法を早めに選ぶ。そうすればきっと、 生活の質を上げられるようになる」 情報交換やリハビリを楽しむ場として活用してほしい。 そんな思いでいま、患者組織「のぞみ会」の神奈川支部長を務めている。 (林義則) http://www.asahi.com/health/ikiru/TKY201008210141.htmlNo tags for this post.
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