心療内科(4) 摂食障害 総力戦で臨む「私に命を預けなさい」

[心療内科(4)摂食障害 総力戦で臨む] (読売新聞  2010年7月19日) 炊飯器のご飯をしゃもじで直接食べ、5合をたいらげる。 さらに菓子パン10個、揚げ物、スナック菓子・・・・・。 最後に指をのどに突っ込み、すべて吐く。 大阪府の20歳代のD子さんは、摂食障害の患者だ。 きっかけは2006年、食事を玄米と菜食に変えたこと。 体重が減るのがうれしく、体重42キロ(身長150センチ)の体は間もなく 30キロ台に。 生理も止まった。 2年後に体重が30キロになると、過食嘔吐に転じた。 夫は、そんな姿を見ても無関心だった。 2008年の秋、夫と別居して一人暮らしを始め、体重は一時、28キロにまで 落ちた。 大学病院の精神科を受診したが、医師は顔も見ないで薬を出すだけ。 だれも本気で自分を心配してくれない。 過食嘔吐は続き、死ぬことばかり考えた。 大量の薬を飲んで救急車で運ばれたこともあった。 2008年12月、浪速生野病院(大阪市)の心身医療科を受診した。 このままでは、本当に死んでしまう――。 部長で心療内科医の生野照子さんは、「真剣勝負だ」と腹をくくり、彼女に こう言った。 「私に命を預けなさい」 その言葉の重みと温かいまなざしにD子さんは、「この人を信じてみよう」と 思った。 摂食障害は、心と体が深く関連した病気だ。 重症になると栄養失調で様々な合併症を引き起こし、最悪の場合は死に至る。 「点滴や栄養指導、カウンセリングなど、体と心の治療を併せて行う必要が ある」と生野さん。 摂食障害の患者は、家族に怒りの矛先を向けることが多い。 D子さんもそうだった。 生野さんは母親の相談にも乗り、心理士が母親のカウンセリングを行った。 家族の理解は、回復への大きな力になるからだ。 母親は娘の病気を深く理解するようになり、幼いころに寂しい思いをさせた ことなどを謝った。 D子さんは「以前よりつながりが深まった」と実感する。 今春からは、院内の患者同士の集まりにも参加。 同じ病気の仲間がいる安心感を感じた。 生野さんは「摂食障害の治療は難しい。心療内科医が、心理士、家族、他の 患者らの力を借り、総力戦で臨むのです」と言う。 D子さんの過食はまだ続いている。 しかし、過食に費やす時間や回数は大幅に減った。 「まだ不安はあるけど、先生たちを信じて病気を治していきたい」。 彼女は今、必死に生きようとしている。生野さんは、それがうれしい。 [情報プラス]<体が心に影響を及ぼすことも> 摂食障害は、心と体が深く関連した病気、と書きました。 D子さんの場合、小学生のころから心と体の調子を崩すことがよくあり ました。 いつも「何で生きなあかんのやろ」と考えていたそうです。 結婚後、拒食から体重が30㎏になった時、夫に「病院に行きたいから、 ついてきてほしい」と頼んでも、「俺には関係ない」と突き放されました。 こうした孤独感から、拒食や過食にいっそう拍車がかかったのです。 逆に、体の状態が心に影響を及ぼすこともあります。 D子さんは、生野さんの治療を受けるようになってからも、実家の母親に 食事の不満などでどなり、後で自分を責めることもしばしば。 そんな時は、生野さんからこう説明されました。 「栄養失調になると、イライラや気分の変わりやすさ、落ち着きのなさ、 うつといった症状が強く出ます。今のあなたの言動は、病気がそうさせて いる。治れば、本来のいい自分が表れてくるはずです」 D子さんはそう言われ、少し気持ちが楽になったそうです。 摂食障害は、心と体が相互に関連している病気。 だからこそ、その両面から治療を進めなければならないのです。 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=28185        No tags for this post.
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