心療内科(3) 食事療法 ゆとりがカギ

[心療内科(3)食事療法 ゆとりがカギ] (読売新聞  2010年7月16日) 佐賀市のC子さん(31)は、22歳だった2001年夏、医師から「1型の 糖尿病」と告げられた。 1型糖尿病は、血糖値を下げるホルモンのインスリンがほとんど分泌されなく なる病気。 生活習慣が原因の2型とは異なる。 C子さんはインスリンの注射を1日4回欠かさず打ち、食事を1日1,600 キロ・カロリーと指示された。 しかし、普通に食べられないことが苦痛になり、冬には反動から「過食」が 始まった。 冷蔵庫の食べ物をすべて食べないと気が済まない。 そんな自分が嫌で落ち込み、「死にたい」と考えるようになった。 仕事もできなくなり休職。 体重も増え、血糖値も悪化した。 翌2002年3月、医師に過食のことを話した。 そこで紹介されたのが、九州大学病院(福岡市)の心療内科。 同科で糖尿病や摂食障害を専門とする瀧井正人さんが主治医となった。 瀧井さんは、患者からまず、糖尿病についてこれまでだれにも言えなかった つらさや怒りを引き出し、時間をかけて聴いていく。 C子さんは、「何で私がこの病気にならないといけないの?」と、病気を否定 する気持ちでいっぱいだった。 しかし、抗うつ薬を飲み、話を聴いてもらううちに、少しずつ病気を受け 入れられるようになった。 最も救われたのは、「インスリンをきちんと打てば、普通に食べていい」と いう、これまでの厳しい指導とは違う瀧井さんの言葉。 適量のおやつを食べる「間食タイム」も提案された。 気持ちが楽になった。 瀧井さんによると、食事療法は厳格にやり過ぎると長続きしない。 多少の緩みを許容すると、かえって自己管理がうまくいくことが多いという。 抗うつ薬は1年で不要になった。 その後、結婚もした。 しかし、仕事は人に任せられずに抱え込み、家事は自分の納得のいくように こなせない。 そんな自分が許せなくなり、過食に走ることがまだあった。 自分の完璧主義が、病気を悪くする悪循環を招いている――。 カウンセリングの中でそう気づかされ、「仕事も家事も8割できれば良し」と 心がけた。 やがて少しずつ過食も治まり、2008年4月、同科での治療を終えた。 今は地元の病院で糖尿病治療を続け、血糖値も安定している。 瀧井さんは「糖尿病になると、家族や周囲の人たちまでが『食べてはダメ』と 監視の目を向けがち。 それがストレスになり、独りで苦しむ患者は多い。 心も併せて診る必要が大きい病気なのです」と指摘する。 <情報プラス 〜糖尿病への認知行動療法〜> 「1型糖尿病なんだから、インスリンをきちんと打てば、普通に食べて いいんだよ」 C子さんは、瀧井さんのこの言葉を聞いて、すごく救われたそうです。 「あ、あたしって、食べていいんだ」と、気持ちが楽になりました。 それまでC子さんを縛り付けていた「糖尿病=食べちゃいけない」という 固定概念が、瀧井さんの言葉によって崩れたのです。 極端に偏ってしまった物事の受け止め方や考えを修正していく精神療法(心理 療法)。 これを認知療法(認知行動療法)といいます。 瀧井さんがC子さんに行ったのは、まさに「糖尿病患者さんへの認知行動 療法」と言っていいでしょう。 彼女は発症後まもなく、「どんなに頑張っても、いつか糖尿病が悪化して、 (合併症である)網膜症や腎症になるんだ」と思い込んでいましたが、この 極端な考え方も、治療を受け続けるうちになくなりました。 <本> 瀧井さんは昨年、患者さんと一緒に「糖尿病こころの絵物語」(時事通信社、 本体1,600円)という本を出しました。 C子さんと同じく、1型糖尿病に摂食障害を合併した若い女性が絵を描き、 瀧井さんが文章を書きました。 糖尿病が患者さんにどのように体験され、患者さんをどう追い詰めたか、 患者さんが心療内科での治療によってどのように自分を取り戻していった かが、患者さんの目を通して描かれています。 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=28086No tags for this post.
カテゴリー: し心療内科,  うつ病(鬱病), と糖尿病(DM) パーマリンク