心療内科(1) 心身症 絶食療法で腹痛改善 

[心療内科(1)絶食療法で腹痛改善] (読売新聞  2010年7月14日) 近畿地方の50歳代の主婦A子さんは、30歳代の半ばごろから、食事を すると、おなかがひどく痛むようになった。 夫は消化器内科医。 胃や大腸を内視鏡で検査しても、異常は見つからない。 胃腸薬を飲んで痛みを抑えるしかなかった。 血液検査で軽症の膵炎と分かり、治療薬の点滴を受けたこともあるが、 検査数値も症状も改善しなかった。 気分は落ち込み、不眠も悪化。 やがて食べ物の味が分からなくなり、料理も思うように作れなくなった。 46歳だった2002年4月、関西医大心療内科を訪ねた。 慢性膵炎など体の病気の発症や悪化には、ストレスが影響していることが 多い。 こうした病気をまとめて「心身症」と呼び、その患者の体と心の両面を併せて 診る内科が心療内科だ。 教授の中井吉英さんは、A子さんの体を触診や検査で調べながら、診察の度に 話をじっくり聴いた。 心理テストも行い、次第にA子さんの性格が分かってきた。 常に夫と子どもの世話ばかりを考え、自分を大事にしてこなかった。 人に嫌なことをされても、決して反発しない。 ストレスは一人で抱え込む……。 こうした性格が膵炎に影響を与えている、と考えられた。 そこで中井さんが勧めたのが、心身症を対象に行われる「絶食療法」。 入院し、医師の管理のもと、水分以外は一切口にしない。 弱った内臓を休ませ、自律神経や代謝の機能が整うという研究報告もある。 実施する医療機関は少ないが、健康保険も適用される。 A子さんは2003年10月、9日間の絶食療法を受けた。 不思議とつらくなかった。結婚後初めて一人でのんびり過ごし、自分を静かに 見つめることができた。 薬なしでも眠れた。 絶食を終えると、重湯を一口すすり、感動した。 「甘い……」。 味覚が戻っていたのだ。 以来、定期的に中井さんや心理士と会話し、他人に合わせてばかりの生き方を 改めることにした。 夫には思ったことが言えるようになり、腹痛はみるみる良くなった。 「病気は、自分の生き方を見直すきっかけになった。これから大変なことが あっても、受け止められると思う」とほほえむ。 中井さんは「ストレスに満ちた現代社会では、患者を様々な角度から診る 心療内科が、ますます必要になる」と確信している。 <情報プラス〜絶食療法〜> 中井吉英さんは、絶食療法をこう説明します。 「心身症の人を、油絵に例えるとします。その人のキャンバスには、長年に わたり、様々な油絵の具が幾重にも塗り重ねられ、それらは自分が塗った ものもあれば、他人に塗られたものもある。絶食療法は、それらの絵の具を すべて削り取り、真っ白なキャンバスに戻す。心身をリセットするのです。 そこから、自分が本当に描きたい絵を描いていくのです」 しかし、現在、絶食療法を実施している医療機関は少なく、大学の心療内科 では東北大や関西医大あたりしかないようです。 背景には、この治療法が病院の採算に合わない点があります。 絶食療法では、絶食期間以外の精密検査や回復期を含めると、入院期間が 1か月近くかかります。 現在の医療制度では、入院期間が長引けば長引くほど病院の収入にならない 仕組みになっているうえ、絶食療法を含む「心身医学療法」の診療報酬が 低いため、病院はこうした治療法に消極的にならざるをえないのです。 http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=27976      No tags for this post.
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