[葉酸・ビタミンB12投与、アルツハイマー改善]
(読売新聞 2010年5月3日)
軽症期のアルツハイマー病患者にビタミンB群の一種の「葉酸」と
「ビタミンB12」を投与すると症状が改善することを、見立病院(福岡県
田川市)の佐藤能啓副院長(神経内科)が実証した。
葉酸とビタミンB12が、アルツハイマー病の危険因子とされるホモシスチン
(必須アミノ酸の老廃物)の血中濃度を下げることは従来の研究で明らかに
なっているが、患者の集団に投与して証明したのは初めて。
佐藤副院長は、同病院の軽症期の患者を
(1)葉酸を1日1錠投与する第1群(90人)
(2)1日に葉酸1錠とビタミンB12を3錠投与する第2群(92人)
(3)アルツハイマー病の薬として国内で唯一使われている「アリセプト」
を投与する第3群(40人)
に分け、2005年から1年間観察。
重症度を示すミニメンタルテスト(30点満点で、値が低いほど重症)で効果を
調べた。
この結果、観察前は第1〜3群とも平均20点だったが、1年後には、第1群は
23点に、第2群は25点に改善。
一方、第3群は18点に悪化していた。
また、第1、2群はホモシスチンの血中濃度も下がっていた。
さらに、第1群より第2群の方が改善していたことから、葉酸とビタミン
B12を併用した方がより効果が大きいことも分かった。
ただ、佐藤副院長が別に行った調査では、中等症期以上の患者に葉酸や
ビタミンB12を投与しても改善しなかったことから、発病早期にのみ有効と
みられる。
佐藤副院長は「根本療法にはならないが、病気の進行を遅らせるアリセプト
しかない現状からみると、今回の知見は患者にとって朗報といえる。
アルツハイマー病が疑われたら早めに受診してほしい」と呼び掛けている。
(大野亮二)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20100503-00000373-yom-sci