広がる漢方治療(5)痛み和らげ気力回復

[広がる漢方治療(5)痛み和らげ気力回復]

(読売新聞  2010年4月20日)


「痛みはもっと強くなる。治療は難しい」
関東地方の主婦・D子さん(30代)は、2008年12月ごろに受診した痛み治療
(ペインクリニック)の医師の言葉に絶望的な気持ちになった。
D子さんの病気は全身に激しい痛みが起こる「線維筋痛症」。

原因不明で、痛みのほかに疲労感や微熱など、様々な症状が出る。
医師にかかっているのは約15万人だが、実際の患者数は10倍以上の約200万人
と見られている。

痛みは手首から始まり、3か月間、日を追って、ひじ、肩、ひざに広がった。
衣服が体に触れるのも苦痛で、家の中でじっとしている時間が増えた。
横になるのもつらく、1時間と寝ていられなかった。

週ごとに病院を変え、整形外科や神経内科を受診したが、エックス線撮影、
血液検査ではいつも異常なし。

ペインクリニックでようやく、線維筋痛症との診断を得たが、冒頭の厳しい
言葉を突きつけられた。


精神的にも追いつめられたD子さんに、夫は埼玉県小川町の大野クリニックを
すすめた。
院長の大野修嗣さんは、リウマチ、アレルギー両学会専門医で、漢方専門医
でもある。
土曜午後を線維筋痛症の初診患者の診療に充てている。

2009年2月に診察した大野さんは「命にかかわる病気ではない。体の
バランスを整えると、2年程度で良くなる患者は多い」と説明。
D子さんの表情が和らいだ。

線維筋痛症の治療は、痛み止めの飲み薬や抗うつ薬、抗てんかん薬が使われて
いるが、D子さんに持続的な効果はなかった。


このため、大野さんが処方したのが、関節痛や筋肉痛に用いられる
「薏苡仁湯」。
体を温め、汗が出るのを促し、結果的に痛みの軽減をはかる働きがある。
大野さんは「顔がほてり、舌が乾いている様子が見られたため、体内の水分の
バランスを整える処方をした。気力が出る生薬も含まれている」と説明する。

D子さんは「飲み始めて間もなく、体の冷えが改善されるのを感じた。
診察の度に『出来ることを少しずつ増やしていけばいい』と励まされて、
気持ちも前向きになれた」と話す。

3か月後、D子さんは子どもとボールで遊べるまでに回復。
現在は「何かに集中している時なら痛みは気にならない」と喜ぶ。


大野さんは「原因が突き止められない難しい病気の患者に、体と心の双方に
働きかける漢方治療が役立つこともある」と話している。



<線維筋痛症への漢方処方>
薏苡仁湯、麻杏薏甘湯、当帰芍薬散、柴苓湯、麻黄湯など

体力の程度や症状などによって、処方は選択する




http://www.yomidr.yomiuri.co.jp/page.jsp?id=23756





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