歯列不正に伴う咬合機能低下は鉄分不足を生じやすい

[子どもにしのびよる口腔機能の変化~かむ機能の低下、栄養の偏り] (毎日新聞 2009年10月5日) 最近、若者の顔が小顔になってきたといわれています。 実際、街を歩いていると、顔が小さく、顎は三角形というシャープな顔立ちの 人が多いことを実感します。 このような顔立ちは若い女性のあこがれにもなっているようです。 しかし、「口腔の健康」という視点から考えた場合、小顔には問題点もあるの です。 これまでも繰り返しお話ししてきましたが、食べ物をきちんと「咀嚼」し、 消化吸収を効率よく行うためには、顎や周囲の筋肉の働きが重要です。 しかし、小顔の人は上顎に比べて下顎が小さく、噛むことをつかさどる咬筋の 発達が未熟である傾向があります。 また、正常な顎を持つ人では、歯並びは顎の形にそった「U字形」になり ますが、小顔で三角形の顎をしている場合、歯並びは「V字形」になっている ことが多いのです。 そのため、中の体積が狭くなり、舌も十分に動かせなくなってしまう可能性が あります。 この結果、栄養の吸収消化がスムーズにいかなくなるのです。 分子整合栄養医学(健康、病気の概念を分子レベルで栄養素の種類と適量を 明確にした科学)においては、消化吸収が不十分である場合、特に鉄分の 不足が起こりやすく、貧血やうつ状態を起こしやすいといわれています。 若い女性には鉄欠乏性の貧血が多いことが知られていますが、これまで述べて きたような顔貌の変化による口腔機能低下の問題が一因になっていると考え られています。 丈夫な顎や咬筋の形成には小さいころからの食習慣がとても大切で、 スルメなど硬いものでもできるだけ食べさせることです。 全身の筋肉を発達させる、という意味では外遊びをなるべくさせてあげる ことも必要でしょう。 こうしたことを機会があるごとにお母さん方にお話ししています。 なお、赤ちゃんには母乳栄養がよいといわれています。 おっぱいを吸うときに顎やその周囲のあらゆる筋肉を使うためです。 現代の子どもたちは、小さな頃からファストフードやインスタント食品を ひんぱんに口にする傾向があり、気付かないうちに過剰にカロリーを摂取して しまっていることがあります。 一方で、そうした食事にはビタミンやミネラルが不足しており、これらの栄養 補給が追いついていない可能性もあります。 やせた土壌で作られた食材の氾濫などもこうした事態に追い打ちをかけて います。 専門家の中には、ミネラルやビタミンの不足が「キレる子どもをつくる原因に なっている」と指摘する声もあります。 いずれにしても、このままでは子どもたちの将来が危ういことは確かです。 栄養状態に問題があるまま大人になれば、様々な病気を発症するリスクが 高まることは必至です。 健康長寿を達成するために、私たちは昔の生活習慣、食生活から多くのことを 学ぶ時期に来ています。 日本顎咬合学会では、口腔だけでなく、体全体の健康という視点から、 子どもたちの将来を考える活動に取り組んでいきます。 (日本顎咬合学会・山地良子) http://mainichi.jp/life/health/mibyou/archive/news/2009/20091002org00m100033000c.html ————————————————– (注)噛み合わせが未熟な小児にスルメほど硬い食物を与えて良いか どうかは賛否両論あります。 (横山歯科医院) ————————————————–No tags for this post.
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