風力発電の町、エコだけど 低周波音の悩み

[風力発電の町、エコだけど「低周波音」の悩み] (読売新聞  2009年9月29日) エコブームを追い風に普及する「風力発電」や、空気中の熱を利用して湯を 沸かす省エネタイプの「家庭用給湯器」。 環境にやさしいはずの機器から「低周波音」が出ているとして、不調を訴える 人が相次ぎ、環境省が調査に乗り出す。 一体何が起きているのか。 静岡県東伊豆町。 相模湾を望む山腹に住宅が立ち並び、谷を隔てた隣の尾根に10基の白い風車が 立つ。 支柱の高さは65メートル、羽根の直径は77メートル。 巨大な風車群は町のシンボルだが、住民の川澄透さん(79)は「試運転が 始まってから、船酔いのような症状が出て、夜中に何度も目が覚めるように なった」と憤る。 近隣の30人ほどが同じような体調不良に悩むという。 川澄さんは、低周波音が原因で同じような症状を訴える人がいることを、医師 から聞いて知った。 1秒間に空気が振動する回数をヘルツと言い、1〜80ヘルツの音波を低周波音 と呼ぶ。 高速で走る車の窓を開けた時に聞こえる「ボボボッ」という音が典型的だが、 周波数が低くなると、人の耳には聞こえない。 環境省によると、低周波音に関する苦情は1990年代まで全国で年間40件前後 だったが、2000年度は115件、07年度は181件に増えている。 所変わって東京・板橋区の女性会社員(39)宅。 庭の向こうに隣家の給湯器が見える。 エアコンの室外機に似た小ぶりな姿だが、「あれが動き始めると、頭の中が 小刻みに震えるんです」と女性は訴える。 工場や建設工事の騒音は騒音規制法で音量の基準が定められ、違反すれば 罰則もあるが、低周波音には規制がない。 「感じ方に個人差があるため」と環境省。 同省によれば、低周波音が人に苦痛を与える原因も、苦情が増えている理由も 分かっていないという。 大手造船重機メーカーの元技術社員で、在職中、騒音問題にかかわったこと から低周波音の問題にも詳しい成蹊大非常勤講師の岡田健さん(65)は、 「国は低周波音が人に影響を及ぼす仕組みを解明し、低周波音を出す機器を 設置できる場所を制限すべきだ」と訴える。 こうした声や苦情の増加を受け、環境省は今年度から愛媛、愛知両県の風車の 周辺で、低周波音と住民の健康状態の因果関係を調べることを決めた。 冬場の風の強い時期に、風車からの低周波音を測定し、住民の声を聞き取る 方針だ。 「これまで環境省は、我々が低周波音の被害を手紙で伝えても、現地に来る こともなく、実態を調べようとしなかった。今度こそ、苦しむ声に謙虚に耳を 傾けてほしい」 川澄さんはそう話した。 (木田滋夫) http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090928-00001234-yom-soci            No tags for this post.
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