犬の7割が飼い主の低血糖に反応、汗のにおいを感知か

[犬の7割が飼い主の低血糖に反応、汗のにおいを感知か]

(NIKKEI BP  2002年9月6日)


<EASD学会速報>
インスリン治療中の糖尿病患者を対象とした調査で、飼い主が低血糖発作を
起こした時、側にいた犬の7割が普段とは違う行動を示したことがわかった。
低血糖時の汗には、ごく微量の「カテコラミン」が含まれており、その
においを犬がかぎ分けるのではないかという。

オーストラリアでBrisbane Clinicを開業する糖尿病専門医、Alan E. Stocks
氏の研究で、9月5日の一般口演「Hypoglycaemia」で発表された。


「低血糖」は、インスリン治療の重大な副作用の1つ。
ごく軽い低血糖なら補食で元に戻るが、特に高齢者では、低血糖状態に本人が
気付かないケースがしばしばみられ、臨床上の大きな問題となっている。

Stocks 氏は2000年の暮れ、British Medical Journal(BMJ)誌に掲載されて
いた、「低血糖を知らせて飼い主の命を救った犬」の話に目を引かれた。
その号はクリスマス特集号で、心温まる話やユーモラスなエピソードが掲載
されている。
そんなこともあるのかと、しばらくは気にもとめなかったが、たまたま来院
した患者にふとその話をすると、「私の飼っている犬も、低血糖になっている
ことを教えてくれたことがある」との返事。

俄然興味を抱いたStocks氏は、同氏のクリニックの受診患者462人を対象に、
犬を飼っているかや、低血糖発作を起こした時に側に犬がいたか、その時に
犬は普段と違う行動を示したかを尋ねるアンケートを行った。


受診患者のうち、犬を飼っていたのは304人(65.8%)。
4割弱の人は、低血糖発作を起こした時に犬が側にいたことがあり、うち
67.9%が、「犬が普段とは違う行動を起こした」と回答した。

犬の起こした行動で最も多かったのが、服のすそを引っ張る、他の家族を
患者のところにつれてくるなどの「注意を引こうとする行動」。
鼻を擦り付ける、なめる、落ち着かずうろうろする、吠えるなどの行動も
多かった。
こうした反応を示した犬に、性別や犬種、純血かどうか、家の中で飼って
いるか否かなどの差はなく、「低血糖に反応するという行動は、犬にごく
普遍的な現象」(Stocks氏)であることがわかった。

家の中で飼い主が低血糖発作を起こしたのを、家の外にいた犬が吠えて
知らせたとの事例もあることから、Stocks氏は「犬は飼い主の異変を“見て
”反応しているのではなく、他の手段で感知している」と推察。
犬は嗅覚が特に鋭敏なので、汗のにおいを手掛りにしているのではと考えた。


そこでStocks氏は、患者に協力してもらい、普通に運動した時と、インスリン
注射で低血糖にして運動した時との汗のサンプルを採取。
研究機関に分析してもらったところ、低血糖状態の時の汗には、
「アドレナリン」や「ドパミン」、「ノルアドレナリン」など各種の
「カテコラミン」が含まれていることがわかった。
含まれるカテコラミン量はごく微量だが、「犬にとってこのにおいは
おそらく“恐怖のにおい”で、それに反応するのだろう」とStocks氏は考察
した。


犬が反応するのが本当に汗に含まれるカテコラミンに対してなのかや、
どのカテコラミンに反応しているのかなど、今後解き明かすべき課題は多い。
しかし、 Stocks氏の考察が正しければ、特定のカテコラミンのにおいに
反応する「低血糖介助犬」を育成することも可能になる。
実際、地震などの災害で生き埋めになった人を見つけ出す救助犬は、危機的
状況に陥った人が放出するカテコラミンのにおいに反応するよう訓練されて
いるという。

Stocks氏は最後に、低血糖を知らせる介助犬は、特に一人暮らしのお年寄りに
とってまさに命綱となると強調。
「解決すべき課題は多いが、こうした患者を救うために、我々はできることは
何でもやるべきだ」と述べ、満場の喝采を浴びた。




http://medical.nikkeibp.co.jp/inc/all/hotnews/archives/205164.html





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