ハイなジーンのための免疫学「抗体」

[ハイなジーンのための免疫学「抗体」]


ヒトの身体は肉厚の土管にたとえることができます。
中央部の管が消化管です。
一方の穴が口と鼻であり、他方の穴が肛門です。

身体の奥深くに位置しているように感じる小腸も、土管の内壁であり、
凖外部と言えます。


外敵・・・主に微生物(細菌やウイルス等)は、土管の外壁か内壁から侵入を
試みています。
外壁=皮膚は傷がない限りなかなか侵入できません。
これに対して内壁は侵入の可能性が高く、外敵にとっては狙い目です。
内壁は外壁と異なり、ただ丈夫につくれば良い訳ではありません。
消化・吸収などの役目があるからです。


外壁や内壁の直下には、免疫部隊の中の第1部隊が主に配置されています。
陸軍です。
マクロファージなどの「貪食細胞」が外敵を食べることによって排除しようと
戦っています。


第1部隊をうまく突破した外敵は、血管を通って侵攻を続けます。

細胞は、外壁や内壁を構成する細胞も含めて「組織液」に取り囲まれて
います。
ベネチアのようなイメージです。

微生物は、外壁や内壁直下の部隊をすり抜けると、組織液=運河を通って
海=血液へ侵攻します。


運河や海の免疫を担当するのが、海軍の第2部隊です。
第2部隊の主力はBリンパ球です。

Bリンパ球は空母です。
しかも、空母艦載機の製造工場を持っている空母です。

空母艦載機が「抗体」です。


抗体の攻撃をすり抜けた外敵は、住みやすそうな家(細胞)や集落(組織)に
上陸侵攻します。

集落に上陸した外的に対抗するのが、総司令本部(ヘルパーTリンパ球)と
特殊部隊(キラーTリンパ球=細胞侵害性Tリンパ球)とからなる第3部隊
です。


さて、「抗体」の話に戻ります。

Bリンパ球=空母は空母艦載機を積んで警戒任務に就いていますが、まだ敵を
発見していない段階では、「IgM」と「IgD」という哨戒機や偵察機を
甲板上に出しています。
敵を発見すると抗体「IgM」は哨戒機から戦闘爆撃機に変身して、攻撃を開始
します。
最初に敵に攻撃加えるのが主に「IgM」です。

次に、空母は格納庫から生粋の戦闘爆撃機である「IgG」を甲板に上げて発艦
させます。
「IgG」は「IgM」に遅れて戦闘に加わりますが、主力戦闘機であり数も多い
ので、血液免疫=海軍の主役です。


新生児は「受動免疫」を持っています。
胎児は母親と胎盤=血液で繋がっていて、血液免疫の主役である「IgG」抗体
をもらいます。
「受動免疫」の主力は、この「IgG」抗体です。


抗体=空母艦載機には他に「IgA」などの種類があり、身体の部位に応じて
得意不得意があるので、適材適所で配備されています。

「ワクチン」の多くは、この第2部隊である海軍を増強することで効果を発揮
します。

Bリンパ球=空母は、最初に敵を発見した時よりも2回目に遭遇した時の方が
強い攻撃が可能です。
Bリンパ球=空母は敵に遭遇すると、自分自身を分裂増殖することが可能
ですが、2回目の時にはより素早くより多く分裂増殖できます。

それは、敵を覚えている「メモリーBリンパ球」が存在するからです。

さらにBリンパ球=空母は、2回目の対戦の際には、より多くの抗体=空母
艦載機をより素早く製造できます。


ワクチンは弱毒化した、或いは無毒化した敵を注射などで体内に入れること
です。
ワクチンを認識したBリンパ球=空母が1回目の戦いに簡単に勝利します。
そして敵を覚えている「メモリーBリンパ球」が存在するようになります。

第2回戦は本当の感染ですが、「メモリーBリンパ球」のお陰でより強力に
戦えるので、有利に戦いを進め、勝利する確率が高くなります。
つまり、症状が出ないか、軽症で済むようになります。



(横山歯科医院・横山哲郎)




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