舌の運動 リハビリにも美容にも

[舌の運動 リハビリにも美容にも] (元東京医科歯科大学臨床教授エッセイ) (読売新聞 2008年9月12日) 「話の出来に納得がいかねえ」と言って落語家の五代目三遊亭円楽さんは、 「芝浜」という大ネタを演じた後に現役引退を決意した。 それより1年半前に起こした脳梗塞の影響か、「舌がもつれて、うまく 話せねえ」ということらしい。 周りが「まだまだやれるじゃないですか」と引き留めたが、当人だけが分かる 感覚なのだろう、頑として撤回することはなかった。 落語家は、当たり前のことながら話すことが商売である。 必死にリハビリに努めたのに、思い通り舌が回らなかったのは、よほど 悔しかったに違いない。 私たち歯科医であれば、思うように歯を削れない、詰めることが出来ないと 言うことになるだろうか。 その前に、レントゲン画像を的確に診断したり、患者さんに説明したり 出来なくなってもだめだろう。 だから、絶えず身体に気をつけて、勉強も続けていかなくてはならない。 これが出来ないならば、私たちも円楽師匠と同じように、いさぎよく現役 引退の道を選ぶべきであろう。 脳梗塞の後遺症のうち口の中の問題としては、うまく話せない、食べられ ない、うまく飲み込むことが出来ないことが挙げられる。 これらはいずれも舌と口の周りの筋肉がうまく働かなくなった結果として 起こる。 従って、リハビリには舌を動かすことが1番である。 いろいろな方法が示されているが、まあ、大方は以下のようだ。 まずは思いっきり舌を前に突き出す。 そして、出した舌を鼻の頭に届かんばかりに持ち上げる。 それから下方にアカンベーをするように出す。 さらに左右に思い切り動かす。 舌の先端で、ほおの内側をグーッと押すのもよい。 最後の仕上げは口の中で歯の外側をなめ回すようにぐるっと1周する。 それぞれの行為を5秒ずつ行ったとして、全部で1分足らずで出来る。 これを何回か繰り返すと、かなり効果がある。 この舌の運動、後遺症のリハビリだけでなく、老化防止や、老化に伴う口の 中の機能低下を回復するのにも役に立つ。 老人ホームでも介護士さんの指導の下、皆で一斉に行っている光景を見る ことが出来る。 いつまでも自分の口で食事をするためにも、舌の運動は欠かせない。 さらに何と、この舌の運動はフェイシャルエステ(顔の美容)にも効果的と いうことである。 舌と共に周りの筋肉が動いて、あごのたるみや顔のむくみも取れるらしい。 いま流行の小顔になるというわけだ。 どうです? 大したものじゃありませんか。 さあ、私も始めようかな。 何? お前は2枚あるから大変だろうって? 余計なお世話だ。 http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20080912-OYT8T00412.htmNo tags for this post.
カテゴリー:  MFT口腔筋機能療法, の脳科学・脳疾患, び美容外科(形成外科) パーマリンク