サイトメガロウイルス難聴 抗ウイルス薬の投与で改善することも

[薬で改善する難聴も 胎児期ウイルス感染が原因 早期発見、治療に研究班] (共同通信  2008年6月24日)(医療新世紀) 胎児期のサイトメガロウイルス感染が原因で、新生児1000人に1人に 起きるという難聴。 治らないとされてきたが、出生後すぐに診断がつけば抗ウイルス薬の投与で 改善する例のあることが判明。 厚生労働省研究班が検査法や治療法の研究を始めた。 <難聴の18%> サイトメガロウイルスは母乳や尿、唾液などを介して、多くは乳幼児期に感染 する。 健康なときなら問題はないが、免疫力が落ちるとウイルスが活性化し発熱や 肺炎などを起こすことがある。 深刻なのは、胎児期に胎盤を通じて母体から感染するケースだ。 生後数カ月たってからの感染とは違い、小頭症や脳の石灰化、出生時の 低体重、そして難聴といった合併症の恐れがある。 さいたま市にある目白大保健医療学部の坂田英明教授(小児耳鼻科学、目白大 クリニック院長)は「妊婦の約300人に1人が感染している。最近は感染した ことのない若い女性が増えており、妊娠中に母体が初感染し、胎児に ウイルスが移行する危険性は高まっている」と言う。 坂田教授が3月まで耳鼻咽喉科長を務めていた埼玉県立小児医療センターで、 難聴の疑いで来院した生後5日から7カ月の162人を診断したところ、 38人が先天性難聴で、このうち7人(18%)がサイトメガロウイルスに感染 していた。 <無症状が90%> 音は外耳道から鼓膜、耳小骨を経て蝸牛に達し、蝸牛内部の有毛細胞で 電気信号に変換され脳に伝わる。 ウイルスに感染すると、蝸牛を満たしたリンパ液の組成が乱れるため、 有毛細胞を支える基底板がうまく振動せず、これが難聴の原因と考えられて いる。 坂田教授らは、難聴でウイルス感染している新生児6人に、抗ウイルス薬 ガンシクロビルを6週間点滴したところ、4人に変化はなかったが、2人は 聴力が改善。 治療で尿中のウイルス量が減ると、聴力が良くなるという関係も分かった。 海外でも数年前から同様の治療例が報告されているという。 早期の発見と治療が鍵となるが、問題は感染しても90%は症状が出ないため 見落とされがちなこと。 国内では既に、音を聞かせて脳の反応を調べる「自動ABR」を使った新生児 聴覚スクリーニングを7割が受けている。 スクリーニングで感染が疑われた場合、感染が胎児期か出生後を判別する ことが重要。 坂田教授らは、出生後にかかとから採血して行う先天性代謝異常検査 (ガスリー検査)で使った濾紙や、臍帯(へその緒)の血液を検査し、 治療や療育につなげる手法を同医療センターで確立している。 <3年計画で> 診断後の治療、療育、教育は、患者のコミュニケーション能力を高めたり 心身の発達を助けたりするために大切で、継続的な支援が必要だが、十分では ないのが現状だ。 また、サイトメガロウイルスは神経発達に悪影響を与えるため、学習障害や 注意欠陥多動性障害(ADHD)、自閉症と診断されている子どもの中にも、 胎児期感染者がいる可能性があると指摘されているものの、実態は分かって いない。 こうした状況を受け2008年度、坂田教授も加わった厚労省研究班が発足。 複雑な臨床経過の解明や、診断から教育までの連携・支援態勢の基礎づくり などを、3年計画で目指すことになった。 尿で感染が判定できるスクリーニングキットの開発や、人工内耳治療の研究も 予定している。 (共同通信 影井広美) http://www.47news.jp/feature/medical/2008/06/post-51.htmlNo tags for this post.
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