脅迫型勧告:フロスか死か

[脅迫型勧告:フロスか死か] (読売新聞  2008年1月25日)(元東京医科歯科大学臨床教授エッセイ) 以前、この欄で紹介した「ハミガキ王子」、おかげさまで多くの方から お褒めの言葉を頂いた。 光栄なことに「あれ以来、10分間の『ながら磨き』を励行しています」などと 言って下さる方もいた。 こうなれば、さらに歯と口の健康情報を、分かりやすく提供しなくてはと 考えている。 さて、私たちハミガキ王子のライバル?である「ハンカチ王子」と「ハニカミ 王子」はともに、もはや王子の愛称さえ捨てて、それぞれの分野で着実に 階段を一歩上がり、ますます存在感を増している。 「さすが王子たちよ!」と賛辞を送るものの、う〜ん、こうなればわが ハミガキ王子も、さらにグレードアップを図る必要がある。 「なに、10分間歯を磨いても、まだ足りないのか?」とうんざりする方も 多いと思うが、少しだけ説明をさせて頂きたい。 むし歯と歯周病、これはどちらも口の中にいる細菌の固まり(プラーク)が 関係している。 だから、予防するにはこのプラークを徹底的に取り除くことが大切と、 10分間の「ながら磨き」をお薦めした。 しかし、歯がきれいに並び、さらに歯茎が歯と歯の間をピッチリと埋めている 20歳代前半では完璧なのだが、歯の隙間が目立ち始める30歳にでもなれば、 そろそろ別の工夫も必要になってくる。 それが、糸楊枝とも呼ばれているデンタルフロス、爪楊枝の先に毛が生えた ような歯間ブラシなど、歯の間の清掃用具の使用である。 つまり、歯と歯の間の接触がゆるんだり、隙間が出来たりすると、食物の カスが入り込み、普通の歯ブラシだけでは取りきれない。 アメリカでは「フロスか死か」などという大げさなキャッチフレーズで、 国民にデンタルフロスの使用を促している。 フロスを使わないと歯と歯の間の細菌が取りきれないで、歯周病になり、心臓 疾患や肺の病気にもつながりますよという、私は好きではないのだが、いわば 脅かし型の勧告である。 現代のシンデレラ物語として話題となった90年代の映画「プリティ・ ウーマン」、その中で、ジュリア・ロバーツ扮する主人公が食後にフロスを 使用するシーンがあった。 アメリカではこれほどフロスが普及しているのだ、と感心したのを覚えて いる。 歯間ブラシとフロスの効果は、いろいろなところで報告されているが、 間違いなくプラークがよく取れる。 フロスは歯と歯が接触している部分、歯間ブラシはその名の通り、歯と歯の 間のプラークを取るのに適しているようだ。 両方使用するのが一番いいが、どちらか片方でも使う習慣を付けるとよい だろう。 弘法は筆を選ばず? いやいや優れた調理人は何種類もの包丁を使い分けると言う。 王子も道具を選んで、しっかりと予防を行うのがよいのでは? http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/karadaessay/20080125-OYT8T00335.htm
カテゴリー: げ芸能人・有名人, よ予防歯科 タグ: パーマリンク