慢性疲労症候群の犯人はエンテロウイルス

[慢性疲労症候群の犯人はエンテロウイルス]

(HealthDay News 2007年9月13日)


父親の息子を思う気持ちが、謎に包まれていた疾患の原因解明を前進させる
ことになった。

米カリフォルニア州トランスの開業医John Chia博士は、1997年に慢性疲労
症候群(CFS)と診断された息子のAndrew Chia氏との共同研究でCFSと
エンテロウイルスとの関連を示し、その知見を医学誌「Journal of Clinical
Pathology」オンライン版に9月13日発表した。


米国では、推定100万人以上が慢性疲労症候群(CFS)に罹患していると
いわれる。
特に40〜60歳の女性に多い疾患で、原因不明の疲労感、睡眠障害、記憶力
および集中力の障害、疼痛など、さまざまな衰弱性症状がみられ、多発性
硬化症(MS)と同程度の障害を来すこともある。

1980年代後半に初めてCFSの存在が認められたが、当初はその信憑性が
疑われたこともあった。


エンテロウイルスのほかにも、いくつかのウイルスがCFSに関与していると
いわれているが、ウイルスの関与を裏付ける根拠を見つけるのは困難で
あった。


Chia氏はまず、患者から約3,000の血液検体を採取してウイルス遺伝子を
見つけようとした。
5〜6年の歳月をかけ、検体の35%にエンテロウイルスが存在することを
突き止めたものの、これは1人の患者から複数の検体を採取した結果であり、
1人につき1検体とすると5%未満という結果にとどまった。

このためChia氏は血液ではなく、組織内にウイルスを探すことに方向転換
した。

過去の研究では、自殺したCFS患者の脳、筋肉、心臓からエンテロウイルスが
発見されたが、生存する患者の脳や心臓の生検は事実上不可能。
そこでChia氏は、エンテロウイルスの増殖の場である胃に着目した。
長期間の消化器症状(CFS患者にはよくみられる)を訴えるCFS患者165人を
対象に、胃生検および内視鏡検査を実施した結果、CFS患者の検体のうち
82%でエンテロウイルスが陽性であったのに対して、対照群では20%で
あった。
最初の感染は数年前(最長20年前)である患者が多かった。


皆が血液にばかり着目する中、Chia氏が消化管に着目したことがウイルスの
発見につながったとある専門家は指摘する。


エンテロウイルスはCFSの原因の一部にすぎないが、CFSが感染性疾患で
あるとする考えは世界を納得させるものだとChia氏はいう。
息子のAndrew Chia氏は今では回復しているが、Chia氏は「息子がいな
ければこの研究はなかった」と述べている。




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