腫瘍壊死因子TNF-αの活性化が病的疲労をもたらす

[体内時計の変化が病的疲労をもたらす]

(Healthday News  2007年7月19日)


さまざまな疾患でみられる病的疲労は、疾患に関連する生化学的変化によって
体内時計が乱れるために生じることが、新しい研究によって示唆された。

スイス、チューリッヒ大学病院のThomas Birchler氏らは、ほとんどの急性
および慢性の感染症、ならびに関節リウマチ(RA)や多発性硬化症(MS)、
クローン病などの自己免疫疾患における炎症反応で、炎症性サイトカイン
(タンパク)である腫瘍壊死因子「TNF-α」の活性化がみられることに
着目し、細胞培養とマウスを用いて、TNF-αによって日中の疲労がどの
ように誘発されるかを検討した。

TNF-αには、感染の病原体を排除する働きがあることが知られているが、
今回の研究の結果、それだけでなく、時計遺伝子の発現を妨げることが
示された。

つまり、TNF-αは、身体の正常な睡眠覚醒リズム(生物学的時計)を逆転
させる遺伝子に作用し、概日(circadian)時計が支配する覚醒と疲労の
日内周期を乱す。

また、TNF-αの活性化によって、マウスの自発運動は低下し、休息時間が
増加した。

インフルエンザなどによる短期の疲労であれば、睡眠は免疫反応を低下
させないといった意味で有益だが、癌や自己免疫疾患、慢性疲労症候群など
長期にわたる疾患をもつ患者では、慢性疲労の愁訴が最も多い。

米ロチェスター大学(ニューヨーク)精神医学助教授で、同大学睡眠・神経
生理学研究所所長のWilfred Pigeon氏は、今回の知見について「慢性疲労を
軽減するための治療標的の方向性を示すものである」と述べている。

また、多数の研究で示されているように、運動によって疲労症状が軽減される
ことについても指摘し、理由は不明だが、運動などの行動療法と時計遺伝子
との関連性は興味深いと述べている。


この知見は、米医学誌「Proceedings of the National Academy of
Sciences」7月第3週のオンライン版に掲載されている。



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