弱り目に祟り目(たたりめ)〜バナナアレルギー〜

[弱り目に祟り目 〜バナナアレルギー〜] (院長未病道楽:5歳頃〜) 私はアレルギー体質である。 最初に蕁麻疹が出たのは、子どもの時、5〜6歳頃だろうか、風邪をひいた 際に、バナナを食べてである。 お袋は栄養士、それも戦後の栄養状態が最も悪い時代に資格をとった栄養士 なので、風邪の時は消化が良くて栄養価の高いバナナが1番と信じ込んで いた、いや、いまだに信じ込んでいる。 ある夜、(船橋市の)とある小児科に連行され痛い注射を打たれた後に、 恐る恐る先生に聞いてみた。 「バナナが原因でじん麻疹が出たと思うんですけれど」 母親が脇から、「風邪をひいた時には、消化がよくて栄養価の高いバナナが いいんですよね」と口をはさんだ。 アレルギーの専門家でもあるその小児科医は大きくうなずき、「体調が悪い 時にはバナナが1番です。お母さん、帰ったらもう1本、いやもう2本 バナナをあげてください。」 その深夜、蕁麻疹が3倍ひどくなった私は、全身の痒みと闘っていた・・・・ その後も風邪をひくたび、バナナを半強制的に食べさせられ、その度に 蕁麻疹を発症した。 子どもの時も現在も、普段体調が良い時には、バナナを食べても何ともない。 農薬問題を除けば、バナナ自体も嫌いではない。 ところが、体調が悪い時にバナナを食べると蕁麻疹が発症する。 中学時代に、宇都宮の小児科医でアレルギーの専門家でもある叔父に、上記の 話をして同情を求めた。 叔父の見解は「バナナアレルギーなんて聞いたことがない。他に原因が あるんじゃないの?」であった。 実は、医学の進歩なんてこんなものである。 進んでいる分野と遅れている分野の差が著しいのである。 いわゆる「不定愁訴」で悩んでいる人は大勢いるが、多くは気のせいと 扱われている。 その実、その半数は本当に気のせいなのであろうが、残りの半数は現在の医学 では解明できていないだけなのである。 バナナアレルギーは珍しい疾患どころか、極くありふれた疾患である。 「口腔アレルギー症候群(Oral Allergy Syndrome:OAS)」は、種々の 花粉症の人に合併することが多い。 アレルギーを誘発する物質が似ていると、その似ている食べ物や花粉にも アレルギーを示す。 「交叉感作」という。 キュウリ :ヨモギ・ブタクサ花粉症 スイカ  :ヨモギ・ブタクサ花粉症 セロリ  :ヨモギ・ブタクサ花粉症 ニンジン :ヨモギ・ブタクサ花粉症 バナナ  :ヨモギ・ブタクサ花粉症 メロン  :ヨモギ・ブタクサ花粉症 オレンジ類:イネ科の花粉症 キウイ  :イネ科の花粉症 スイカ  :イネ科の花粉症 トマト  :イネ科の花粉症 メロン  :イネ科の花粉症 インゲン :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) エンドウ :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) サクランボ:シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) トマト  :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) ナシ   :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) モモ   :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) リンゴ  :シラカンバ・ハンノキ花粉症(カバの木花粉症) これらは、ほんの一部である。 アレルギーは該当する物質の摂取の頻度や接触の頻度が多い方が発症 しやすい。 アレルギー発症メカニズムは水汲みにたとえられる。 プール(アレルギーの家系でない人)にコップ(摂取頻度が少ない)で水を 汲めば、なかなか溢れることはない。 溢れる前に寿命が来てしまえば、該当するアレルギーは発症しないことに なる。 一方、家庭の風呂(アレルギー家系の人)にバケツ(摂取頻度が多い)で水を 汲めば、いずれ溢れてしまい、アレルギーを発症する。 バナナなど南方系植物は「交叉感作」を起こしやすいので有名である。 ・バナナ ・キウイ ・パイナップル ・ゴム(ラテックス) その中でもラテックスアレルギーは多く、グローブをする医療関係者の 15〜30%がラテックスアレルギーを発症するという。 一般人の中にもラテックスアレルギーは増加していて、5〜10%と推定されて いる。 問題なのが、ラテックスアレルギーの患者さんが手術を受ける際に、術者の ラテックスグローブによって重大なアレルギー反応を起こす事例である。 全身麻酔下手術の失敗のうち、原因不明や麻酔が原因とされたケースの中に、 このラテックスグローブアレルギーがあるのではとする意見もある。 さて、少年時代の話に戻って、船橋市の小児科の先生の名誉のために言って おくが、その当時、口腔アレルギー症候群についてはほとんど知られて いなかった。 子どもは自分の嫌なことに対しては嘘をついてまで拒否することもあるので、 子どもの主張をそのまま鵜呑みにはできないとは思う。 けれど、毎回毎回蕁麻疹が出るのだから、親にしろ、小児科の先生にしろ、 ちょっとおかしいな、と感じてくれても良かったとは思う。 バナナダイエットがブームになっている昨今、摂取量が増えるにつれて アレルギーを発症する人も増えるので、頭の片隅に記憶しておいて欲しいと 思う。 現在、実家で私は酔っぱらった時によくこの話をする。 するとお袋は、必ずこう言う。 「でもバナナは体にいいんだよ、本当だよ。」 (横山歯科医院・横山哲郎)
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