アナボリック・ステロイドとは

[アナボリックステロイド]

(Wikipedia)


アナボリック・ステロイドは、生体の化学反応によって外界より摂取した物質
からタンパク質を作り出す作用、すなわちタンパク同化作用を有する
ステロイドホルモンの総称。
多くは男性ホルモン作用も持っている。

『アナボリック』の語源は『構築する』を意味するギリシャ語『anabolein』
で、一般的には単に『ステロイド』と呼ばれるが、糖質コルチコイド成分の
『ステロイド』(副腎皮質ホルモンなど)とは異なる。

アナボリックステロイドは筋肉増強剤として使用されることが主で、
ドーピング薬物として知られる。
短期間での劇的な筋肉増強を実現するとともに、常態で得ることのできる
水準を遥かに超えた筋肉成長を促す作用から、運動選手らの間で長年にわたり
使用されてきた。



<歴史>
1935年に発見された「テストステロン」は経口摂取されず、注射により
体内に投与しても速やかに肝臓で代謝によって活性を失ってしまう、すなわち
作用時間が短いという性質を有していた。

そこで、この物質の代替物としての、多種の調整を加えたテストステロン
アナログの開発が望まれた。

1955年米国の重量挙げ選手団の専属医によって、ついに望まれていた形の
『筋肉増強剤』が開発されるに至った。
それはテストステロンの類似物質、あるいは体内に取り込まれたのちに
テストステロンに変換されるという物質であり、これがすなわちアナボリック
ステロイドであった。

かくして誕生するに至ったアナボリックステロイドは、耐久性の運動競技や
有酸素運動における能力の向上をもたらすものとして、1960年代の初め頃
から重量挙げの選手やボディビルダーらの間で注目を集め始めた。

1975年になると、国際オリンピック委員会によって、オリンピックにおける
使用禁止物質の一覧に新たにアナボリックステロイドが加えられた。
翌1976年に開催されたモントリオールオリンピックにおいて、オリンピック
史上初となるアナボリックステロイドの使用検査が行われた。


1988年に開催されたソウルオリンピックにおいて、100メートル競走優勝者の
ベン・ジョンソンによる『スタノゾロール』の使用が発覚したことで、
アナボリックステロイドはスポーツ界を超えた一般社会からのドーピング
全般に対する関心を惹起することとなった。



<効果と適応>
アナボリック・ステロイドは、生体から分泌される男性ホルモンの代表である
テストステロンの効力を改善するために合成されたことから、タンパク同化
作用を強める働きを持つ。

タンパク同化とはすなわち、摂取したタンパクを細胞内組織に変える働き
(主に筋肉において)のことである。

米国スポーツ医学会は、数名の個体において、アナボリックステロイドが
適切な食事摂取の下で脂肪を付けること無く体重を増加させることに寄与し、
また、強度の運動と適切な食事の下で達せられる筋力増加がその使用によって
より促進されることを認めている。


アナボリックステロイドは医療用に処方されることがある。
そのタンパク同化作用を用いて、骨粗鬆症や慢性の腎疾患の治療、あるいは
怪我や火傷による体力の消耗状態の改善などを目的に用いられている。

医療用に処方されるアナボリックステロイドには、メスタノロン製剤と
メテノロン製剤という2種類がある。
前者は骨粗鬆症、下垂体性小人症、慢性腎疾患、悪性腫瘍、外傷/熱傷による
著しい消耗状態などの治療に用いられ、ヘモグロビン量や赤血球数の増加
などの造血作用をも示す。
後者は、これらに加えて再生不良性貧血による骨髄の消耗状態の治療に
用いられている。
再生不良性貧血は、骨髄中の造血幹細胞が何らかの原因で傷害されて生じる
貧血である。
一般に再生不良性貧血の治療は免疫抑制療法・骨髄移植・タンパク同化
ステロイド療法などがある。
そのうちタンパク同化ステロイドは軽傷例に使用する。
タンパク同化ステロイドの疾患への効果のメカニズムとして、腎臓に作用して
「エリスロポエチン」(赤血球産生を刺激するホルモン)を出させる働きと、
造血幹細胞に直接作用して増殖を促す働きが考えられている。


HIVによる消耗状態に対する投与の治験も行われている。



<副作用>
アナボリックステロイドには多くの副作用がある。
その副作用は用量依存性で、最も一般的な副作用は血圧上昇とコレステロール
値上昇である。
空腹時血糖値や耐糖能検査の変化も見られている。
テストステロンなどのアナボリックステロイドは、循環器疾患や冠動脈疾患の
リスクを増大させる。
にきびはアナボリックステロイド使用者によく見られ、多くの場合はテスト
ステロン濃度増加に伴い皮脂腺が刺激されて起きる。

高用量のアナボリックステロイドを経口使用すると、アナボリック
ステロイドが消化管で代謝され、その生物学的利用率および安定性が増す
ため、肝障害を起こすことがある。

高血圧、血中LDLコレステロールの増加、血中HDLコレステロールの低下に
より、心血管系の病気を誘発する原因ともなる。
特に「心臓の運動」となる有酸素運動と組み合わせると、顕著な心肥大を
起こさせるので絶対に組み合わせてはいけない。
有名ランナーや自転車競技の選手が数多く心疾患で死亡している。


国際がん研究機関の査定に基づけば、アナボリックステロイドは、ヒトに
対する発癌性(Group2A)をおそらく有している。





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